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連載

ドライなまちづくりと
時間をつなぐリノベーション 
403architecture [dajiba] 
vol.6

リノベのススメ
vol.087

posted:2015.10.5  from:静岡県浜松市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer's profile

403architecture [dajiba]


2011年に彌田徹、辻琢磨、橋本健史によって設立された建築設計事務所。静岡県浜松市を拠点に活動している。2014年に第30回吉岡賞受賞。
彌田徹(やだ・とおる)1985年大分県生まれ。2011年筑波大学大学院芸術専攻貝島研究室修了。
辻琢磨(つじ・たくま)1986年静岡県生まれ。2010年横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA修了。現在、大阪市立大学非常勤講師。
橋本健史(はしもと・たけし)1984年兵庫県生まれ。2010年横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA修了。現在、名城大学非常勤講師。

credit

メイン写真:kentahasegawa

最終回となる今回は、浜松市の市街地をベースにした地元不動産、
〈丸八不動産株式会社〉の若社長、平野啓介さんにお話をうかがいました。
これまで幾度も登場している〈カギヤビル〉という4階建ての古いビルを購入し、
現在の姿につくりあげた仕掛人です。
vol.5の三展ビル同様、
このカギヤビルにもdajibaのプロジェクトはいくつかあり、
この建物が現在のような場所になった経緯や、
共同事業でもある〈ニューショップ浜松〉の運営についてなど、
お話はさまざま展開しました。

辻: 平野さんは現在、この連載で何度か紹介した、
カギヤビルのオーナー会社の社長として、
dajibaともいくつかのプロジェクトでご一緒させていただいていますよね。
僕らと関わり始めたきっかけですが、
僕が記憶しているのは、
最初は”海老塚の段差”に内見にきてくださったときだと思うんですけど、
合ってます?

平野: そうそう、ゴリさん(〈手打ち蕎麦 naru〉の石田貴齢さん、vol.2に登場)に
勧められたのかな。おもしろいことやってる若いやつらがいるよと。
それでネットで調べてお邪魔して、
世の中にはおもしろいことやってるやつがいるもんだと知ったというか。

辻: カギヤビルを購入されたのは2012年でしたっけ?
たしかその直前までは、
2階の一部でKAGIYAハウス(vol.3で登場)として運営されていた
ギャラリースペースと、
既存のお店の数店舗以外は空きが目立っていたと思います。

平野: 今年で丸3年だから2012年だね。

辻: その後、カギヤビルはいまや全国的にも知名度があるほどの
クリエイティブスポットに生まれ変わりました。
ここまでの経緯は、僕が知る限りでは、
社長の感性でひたすら店子を一本釣りをしまくるという認識だったんですけど、
具体的にどういう風に場所づくりをしていこうと思われたんですか。

平野: 買う理由というのは、いまも当時も変わらないんだけど、
はじめからリノベーションをしておもしろいことをしようというより、
ごくごく普通の不動産屋の発想として、
建物ではなく、あくまでも魅力的な土地を取得していきたいという考えだね。
不動産の開発をするうえでは囲碁や将棋と同じで
まず角をおさえるのが基本というか、交差点に立地していたし。
もちろん、以前から、
なかなか面構えのいいビルだなとはずっと思っていたこともあったけどね。
だから構想があったかというと購入した時点では何もなかったのね。
で、とりあえず買いましたと。

当然社内では、
「ボロボロだし貸すなんて無理ですよ”」とか、
あるいは極論を言えば
「取り壊して駐車場のほうがいいんじゃないか」
という意見のほうが普通にたくさんあった。
ただ、僕はそうは思わなかった。
なかに入って一部解体してみたら
二度とつくれない、時間が刻まれた味わいがあって、
簡単に言えば、これいけんじゃねというのがあったんで、スタートさせた。
究極的には、こういうボロいビルをおもしろがって使える人は絶対いると。
だからともかく掃除して解体して天井外して、
電気ガス水道のインフラだけ
使えるようにしてくれればいいからと言って始まった。

そこで勉強したのは、
ボロビルの再生というのは安上がりにはできないということ。
思ったより金がかかる(笑)。
スケルトンにしてインフラを引き直すだけで
安上がりだと思われるかもしれないけど意外とコストがかかる。

こちらが平野さん。インタビュー場所はニューショップ浜松。

辻: そうだったんですね。とにかく始めたと。
でもリーシング(テナント誘致)に関しては戦略的な印象を受けましたけど、
その辺りはいかがですか。

平野: そう、そこは、ある程度戦略的に考えないといけなかった。
どうしたもんかというときに、写真家の若木信吾さんの存在があって。
若木さん自身もプロフィールに静岡県“浜松市“出身と書くくらい
浜松に愛着がある人で、当時からカギヤビルの近くで
小さなお店を持たれていたんで話を持ちかけたんです。
興味を持ってくれたので、
それで2階に若木さんの店、
4階にギャラリーをつくろうという話ができて、それでいまの方向性ができた。

あとは家賃ありきというか、
そこは浜松の同級生の起業家にヒアリングして、
コスト感、広さ感はつかめたんで、
もともとの部屋割りはいまよりもゆったりしていたから、
それじゃあそれくらいのサイズで区切るだけ区切ろうかと。
そこからは若木さんの知名度ももちろん手伝って、数珠つなぎに。

辻: 2階に若木さんのお店の〈BOOKS AND PRINTS〉、
4階の〈KAGIYAギャラリー〉ができて、
残りのスペースを割る、適正な広さに
テナントスペースを仕切り直すところまでは主導されたということですね。
各部屋の内装も少し手を入れていますよね?

平野: 2階から4階までの各部屋で、
天井を解体して、床もコンクリートのまま、
壁は間仕切りしてクロスなどは貼らず、
ガス水道は共用部まで、電気は各部屋の分電盤までしかやりませんと。
ただ、あとは勝手に、入居者さんが何をやっても構いません、
現状回復もなしという条件にして。

その代わりと言っていいかわからないけど、
一般的に家主がやるべきこと(俗にいうA工事)の一部をやってないわけだから、
工事期間中のフリーレント(家賃なし)くらいはみましょうと。
あとは保証金もとりませんよと。それで募集をかけた。

辻: あらためて聞くと、新しい一歩を踏み出したい若者にとっては、
かなり参入しやすいですね。
いま実際、3年ちょっと運営されて、手応えはありますか?
現在のような状況は想像してなかったという話なので、
想像を超えていたかどうかもわからないかもしれないですが、
結果的にいまはほとんど満室じゃないですか。

平野: おかげさまでそうなんだよね。
世の中ではメディア上で
リノベーションされた古くていい感じのビルが数年前から流行ってて、
それは見聞きしている人は浜松にも絶対いる。
そういうところに自分も事務所を持ちたい、
お店を始めたいという人は浜松市の人口80万人中、
0.5%とかそのくらいはいるだろうという想定はあった。
仮に4000人いたとして、そこにアナウンスができれば
10人くらいはくるでしょ?と思ったわけ。

ゴリさんや美容室〈enn〉の林さん(vol.1で登場)のような存在が
既にいるわけだし、そこは割り合いの問題、という考え方だね。
だからこの建物と同じ規模だったり、雰囲気だったりするビルが
5棟も10棟も浜松にあったら確実に空くと思うんだよね。
常にものごとは需給だから。

辻: この規模なら売り手市場になる目算が立っていたんですね。
リーシングの基準は決めていたんですか?

平野: 厳密ではないけど、
できれば若い人にやってもらいたいというところがひとつ。
あとはおもしろかったり、センスがいいという部分。
目標というか、志していたことは、
まちなかに若い人が集まるコミュニティができてほしいということがあった。
テナントさん同士の相互間のやりとりが広がるようなビルであってほしい、
近所づき合いを超えた何かがあるといいなと。
その意味でいうと、この人はほかのテナントさんとうまくいくかな?
という方は、遠慮いただくこともある。

ただ、類は友を呼び過ぎるとおもしろくないので、
近しいけどご縁がなかったという人たち同士を意図的に入れたというか、
そういう部分はすごく意識した。
例えばゴリさんも林さんのことも知らないみたいな方も、
積極的に入ってもらったほうがいいと思って。

辻: その辺りのバランス感覚がすごいですね。
コミュニティ礼賛でもなく、経済合理性ありきでもない。

平野: というのも、あまり僕が常連さん商売が得意じゃないからかもしれない。
ただまさか結果的にこうなるとは本当に思ってもいなかった。
いまカギヤビルにあるシェアオフィスにしても、
ゲストルームにしてもライブハウスにしても。

辻: 各テナントは本当に多様ですね。そのひとつでもあり、
dajibaと丸八の共同事業でもあるこの〈ニューショップ浜松〉は、
仕組み自体は最初の提案から変わっていないですけど、
何度かプロジェクトの場所も動いていて、
結局ここに落ち着いたって感じで、構想がかなり長かったですよね。

©kentahasegawa

「ニューショップ浜松/鍵屋の敷地」

105角のスギ材と100角のタイルを組みあせた什器を
一本あたり100円/月で貸し出す場所貸しの仕組みと内装を提案。
店鋪運営は〈メディアプロジェクト・アンテナ〉。

辻: そもそも発注の形式が、
売り子つきのショップインショップを
カギヤビルでやりたいというものでしたけど、
詳しい部分は一緒に考える感じだったかと思います。
こういう形式で僕らにお願いしようと考えられたきっかけはあったんですか?

平野: 正直、こういうよくわからない話に、
いいアイデアを持ってきてくれるのはdajibaなんじゃないかって
直感的に思っただけなんだよね。

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ただの雑居ビルにならないためには?

Page 2

平野: というのも、ニューショップの前に一度戸建ての計画(“広沢の庭”)を
もらったことがあったじゃない。
そこで君らやり過ぎたでしょ(笑)。
あれは住宅だから売れ残りのリスクが高すぎて踏み込めなかったんだけれども、
100のオファーを出したら120で返ってきた。
そういう経験があったので、1店鋪くらいの話なら、

しかも商業であれば、ハプニングがあった方が絶対おもしろいだろうと。
それでお願いして結果的に出てきたのが
この10センチ四方のスペースを月100円で貸し出すというアイデアで、
僕らは1ミリも予想していないプランだった。
でもこれは収益性まで含めて、
うまく回れば回るというところまで組み立てられていたので、
これはおもしろいし、じゃあやろうかという話になった。

辻: 広沢の戸建ての提案が大きかったんですね。
僕としては踏み込み過ぎだったという反省があったんですけど、
ここでつながっていたとは(笑)。

平野: 僕のなかでは、あの提案をもらったときの率直な感想は、
これどうやって売るんだよっていう(笑)。
このコンセプトを理解して買ってくれる人を探すのは大変だと。
そう思ったけど、
突拍子もないことを考えてくれたなという記憶だけが鮮明に残っているね。

「広沢の庭」

浜松市街地からほど近い住宅地に計画された三戸の建売住宅。

道路を跨いだ大小ふたつの敷地に対して、
セオリー通りの地割りとすると
住宅が駐車場に占拠されたような印象となってしまうところを、

建物だけの敷地と駐車場だけの敷地に振り分け、

共有の中庭と将来の土地利用に融通が利く駐車場スペースを生み出す提案。

辻: ニューショップには社長自身も出店してくださっていますよね。
店鋪数も1年目から倍に増えていますし、
店鋪の共同事業者として、店子として、あるいはビル全体のオーナーとして、
いろいろなかたちで関わってくださっているかと思うんですけど、
1年経ってみていかがですか。

平野: 店子数が増えたことに関して言えば、
開店当時の10店舗から22店鋪までいったのは想定外。
率直な懸念点としては、
売り上げがそこまで伸びていないテナントさんがいること。
普通は退去が進むはずなんだけど……。

辻: でも退去はいまのところゼロなんです。
実際に、直接商品が売れなくとも
オーダーメイドの窓口としても機能し始めているんです。

平野: そう、要するにここにお店を出すことが、
売り上げ以外のところでも価値を見出してくださっていて、
一種のショールーム、ショーケース的な側面があるから
引き続き、出店してもらえている。
なるほどそういう考え方があるかと。
例えばプラダやヴィトンみたいなブランドが表参道や銀座に出店するけど、
店鋪坪に対する売り上げと家賃のバランス考えたら合わないわけだよね。
でも広告宣伝費として出している。

辻: そこと比較するのがおもしろいですね。

平野: 浜松で働き始める前は東京の金融関連の会社で働いていたから、
金融的な価値でものをみてきたからかもしれないけど、
広告価値をみてくださっているんだろうなという整理はしていて。
それはそれでいいんだろうなと。
あとは、想像以上に来場者数が多いということは結果的にはよかったのかなと。

vol.4に登場した鍵屋の階段。©kentahasegawa

辻: dajibaとしては、カギヤビルとの関わりはかなり大きくて、
恒常的なプロジェクトでいうとニューショップが最初で、
その次が〈鍵屋の階段(vol.4に登場)〉、
最新プロジェクトでもある 〈鍵屋の基礎(アパレルショップSHHH)〉、
あとは小さなプロジェクトですけど、
サインボードの計画やキャンプガーデンもそうです。
こうやって特定の建築事務所がひとつの建物で
何回も仕事をするというのは全国的にも相当珍しいパターンというか、
僕ら自身は、三展ビルでも3つ携わらせてもらっている。

それぞれ共同ビルという形式で
古い建物が比較的残りやすい状況が浜松にはあるなかで、
若い人たちが入り込む隙間もあったということかなと捉えてます。
そういった特定の人と内装、インテリアの仕事をするというのは、
オーナーとしてはいかがですか?

例えば鍵屋の階段のマシューのときだと、構造に手を入れることだとか、
SHHHだと解体した天井裏の古い配線処理が難しかったり、
古いビルならではの問題に対して、
僕らも勝手がなんとなくわかるし、社長との距離も近いので、
進め方は案外スムーズにできたのかなと思っているんです。
SHHHさんなんかは新規入居で、
内装はdajibaで最初からいくという話で進んでいたと思うんですけど。

「カギヤビルサインボード計画」

多様なカギヤビルのテナントのまとまりを表すサインボードの計画。
ニューショップの計画後、平野社長から依頼された。
既存壁面のグリッドに寸法を習い、
各テナントロゴなどをカッティングシートに転写、
裏地となる石積みのテクスチャが浮き出る。

平野: そう、だからSHHHさんのときはdajibaがやると聞いたからもう出店OKと。
変なことにはならないだろうと。
ビルとしてのクオリティコントロールは当然必要だからね、
イオンモールだってそれはしているでしょ。
そこで、どの側面でコントロールしていくかというときに、
当然共同ビルってどこまでいってもただの雑居ビルなので、
放っておいたら完全に無法地帯になるわけだよね。
そうならないようにしたいという思いはあるので、
そこはコミュニティとか、いい雰囲気でっていうような視点で判断しますね。

©kentahasegawa

「鍵屋の基礎」

2015年9月に竣工した403architecture [dajiba]最新プロジェクト。
新規入居の工房付きアパレルショップ〈SHHH〉のための内装計画。
コンクリートブロックの基礎に
一般的な規格寸法の木材の格子を組み合わせた工房スペースを、
内外境界にまたがって配置し、店鋪とまちとの新たな接点を計画した。

辻: 僕は大学で都市計画やまちづくりまで含めて学んだので、
その話はとてもよくわかるんですけど、
社長の価値観が興味深くて。
コミュニティの話だとか、古いビルでスチールサッシのほうがいいだとか、
天井を剥がしてカッコいいじゃんと思える人はそこまで多くないと思うんです。
それはどこで培われたんですか?

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“僕らはリスクをとってお金を突っ込む覚悟がある”

Page 3

平野: 一番大きいのは学生時代に
IDEEの〈R-Project〉で
お手伝いさせてもらってたときかな。

辻: そんなことしてたんですか!?

平野: 僕は学部は商学部、
大学院は法学研究科なので建築やデザインを学んでた学生ではないけど、
でも家具とかインテリアは好きだったので
学部の4年のときにいまは良品計画の傘下になっている
IDEEの入社試験だけなぜか受けて。
結局最終で落ちたんだけど、
当時の社長だった黒崎輝男さんがそのころに
R-Project という名前でいろいろなことをやり始めているタイミングで、
“平野くん青学の大学院入ったんでしょ?
いまおもしろいことやってるからさ近所なんだし遊びにきなよ“
と誘ってくれて、そのR-Projectを
ボランティアスタッフみたいな感じで手伝って、
実際にリノベーションもしてみようだとか、
そういうのも手伝わせてもらった。

辻: そのあと金融業を経て、浜松に帰ってきて社長になったんですよね。
僕らとほとんど同じタイミングだったと思います。
dajibaも市街地を拠点にここまで活動してきて、
市街地になるべく人を呼びたいというか、
ニューショップでも郊外に買い物へ行ってしまう人に対して
どうしたら物販が成り立つかということから考えましたし、
カギヤビル自体も、なるべく若い人たちが市街地で活動する際の
参入障壁を低くしたりだとか、
丸八不動産のほかの物件も市街地にいくつかありますけど、
まちなかにこだわるモチベーションはどういうところにあるんでしょうか。

平野: 大きな流れのなかで考えれば、
少子高齢化で人口が減少する、2040年頃に人口が約2割減って、
高齢化率が上がって財政が逼迫するのは明々白々。
そういうときに、
行政は浜松の郊外のインフラを維持することができなくなるんじゃないかと。

要するに、遅かれ早かれ皆市街地で生活しなさいと、
ドーナツ化から戻って来るだろうと、会社としてそういう判断をして、
まちなかに集中して投資しようと。
まちなかって、不動産的にいえば地権者がややこしい。共同ビルも多いし。
でも逆に言えば、不動産屋が出る幕が多いというか、
誰かが音頭をとらないとリセットできないじゃない。
どんなに古くて味わいがあるといっても、
耐震性や人命を考えるとできるだけ早く建て替えをしたほうがいい。
そういうときにその音頭がとれるのは不動産屋ではないかと。
場合によっては買い取りますということができるのも、
それを生業としている不動産屋だから言えること。

再開発コーディネーターやいろいろまちづくりの方々はいるけど、
究極的に違うのは、僕らはリスクをとってお金を突っ込む覚悟があること。
当然リターンがあってのことだけど、それがあるからやれるんじゃないかな。

辻: そのあたりの感覚も、投資銀行で金融にがっつり浸かっていたからなのか、
とてもドライですよね。ドライだけれども、
カギヤビルという場所はいま明らかに特別に存在しているわけで。
建物への愛着とか、風合いを理解しながら、
そこまで言い切れるのは希有な考え方じゃないかなと思います。

平野: そうだね、例えば、いまの地主さんにアイデアがない状態でいっても
良いも悪いもないはずで、
かといって辻くんたちだけで直接行っても
資金的バックグラウンドを含めた実行可能性に疑義がでるだろうから(笑)、
例えば僕らがdajibaと事業案を組み立てて、
“テナントさんにも声はかけ始めている、
家賃これくらいでいこうと思っているという状態だけどやりませんか“
ということなら話が進むかもしれないよね。

辻: おもしろいですね。普通はディベロッパーが土地を買って、
利回り計算して何戸建ててという条件で建築家に発注しますけど。
事業ごと一緒に提案して実際に動く可能性があるというのは。

平野: 僕らも分譲マンションならそういう計算もやるけどね。
このビルもそうだけど、まちなかだといますぐその建物だけをたたき壊して
再開発することに経済合理性がないものが多いんだよね。
あるいは物理的な意味でも、このビルと同じように
隣と壁共有してるから壊せないとか。
もしくはこのビル自体はおもしろくて
こういうネタ突っ込めるのはけど、
ここだけでみると40坪しかなくて、建て替えるには小さすぎるとか。
だから隣が買えるまでのつなぎとしてやろうという考えが根本にはある。
どこまでいっても、こうした行為というのは、
建て替えまでの時間のつなぎだと僕は思っていて、
どうせならおもしろくやる。
さらに言えば家賃も入って利回りもつくとなおよいという考えは
ずっと変わっていないかな。

辻: なるほど、逆に言えば、
時間的にも空間的にも経済的にもズレがあるところというのは、
特に市街地であれば顕著に見つけることができて、
そこに僕らみたいな存在が入り込める余地が少なからずあるということですね。

403architecture [dajiba]のリノベのススメは今回で終了です、
いかがでしたでしょうか。
僕たちが浜松にきて4年半が経ちます。
今回の連続インタビューでは、そのなかで生まれてきた人間関係と、
建築設計やリノベーションの相互作用の一端をご紹介できたかなと思います。
皆、ある時は僕らのクライアントで、ある時は友人で、
ある時はアニキで、ある時は僕らが彼らのクライアントになってと、
関係を名づけえない人たちばかりです。
彼らとともに取り組んだプロジェクトもまた、その場所が何なのか、
どう使われているかをひと言では表すことができないものばかりです。
それは、一般的にはこうあるべきという先入観を取っ払って、
その場の状況と向き合える環境から生まれているからです。
いま既にあるものに真摯に向き合う態度というのは、
リノベーションにおいて、とても大事だと考えています。
そうした自分たちの周りの環境に敬意を払いながら、
自分たちの生活や、仕事、人間関係、建築、都市、
そのすべてが渾然一体となって続いていく、
それ自体が浜松への恩返しになっていければと思います。

information

丸八不動産株式会社

information


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ニューショップ浜松

住所:静岡県浜松市中区田町KAGIYAビル102

TEL:053-451-0855

営業時間:11:30~19:30

定休日:火・水・木

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