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NO ARCHITECTS vol.9:
最終回にして番外編。
このはなの新しいスペース

リノベのススメ
vol.035

posted:2014.7.4   from:大阪府大阪市此花区  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。

writer's profile

HIROSHI NISHIYAMA

西山広志

1983年大阪生まれ。建築家。NO ARCHITECTSを共同主宰。神戸芸術工科大学デザイン教育センター非常勤講師。神戸芸術工科大学大学院芸術工学専攻 (鈴木明研究室) 修了後、2009年 奥平桂子と共に活動を開始。2011年事務所を此花区に移すと同時に〈NO ARCHITECTS〉設立。建築をベースに、設計やデザイン、インスタレーション、ワークショップ、まちづくりなど、活動は多岐にわたる。

NO ARCHITECTS vol.9
まだまだあります

この連載では、NO ARCHITECTSがリノベーションで関わった、
大阪市此花区の物件に絞って、記事にしてきました。
このはなには、実はほかにも魅力的なスペースがたくさんあります。
今回は、番外編としていくつか紹介しようと思います。

まずは、「四貫島PORT」。
正面は四貫島商店街のアーケードに面する建物で、
1階は、もともと魚屋さん。
生臭さの残る冷蔵室は解体、錆びたシャッターなどは撤去。
新たに機能的なキッチンと大きなカウンターの設置など、
きれいにリノベーションされ、店長が日替わりで異なる飲食店に。

四貫島PORT日替わり飲食店の1週間。

月曜と土曜日は、じゃこめしと日替わり定食の「ムクロジ」
木曜は、電子工作やプログラミングの相談ができる持ち込みOKの喫茶「すわる」
金曜は、手づくりパンやキッシュの「喫茶ふっくら」
毎日違う店長が入れ代わり立ち代わり、お店を切り盛りしています。

四貫島PORTの1階。僕らもいつも施工でお世話になっている工務店のPOSさんの内装です。

その他、「MIKIKI」の古着マーケットや、
中津にある「本屋シカク」の出張本棚など、ショップコーナーもあります。
上階は、あまり手を入れずに、共同アトリエとシェアハウスとなっています。
近々、4階の大広間をシアターとしてオープンも計画中とのこと。楽しみです。

ほかでは手に入りにくい本が揃う出張本棚。わかりやすいポップも付いています。

続いて、「FIGYA(フィギャ)」です。
アーティストmizutamaくんの住居兼アトリエで、
定期的に展覧会やライブ、ワークショップも開催されるなど、
ギャラリーやイベントスペースとして活用されています。
写真は、撮影時に開催されていたボン靖二個展「ちゃんとする」の様子です。

FIGYAの1階。左の幕で覆われているのは、居酒屋時代のカウンターです。右の白い壁は、今回の展覧会のためにつくったとのこと。

もともとは、モトタバコヤ(vol.4参照)のように、
モトイザカヤという名前で活用されていた場所でもあります。

2013年3月に行われた劇団子供鉅人による、
散歩と観劇を兼ねたツアー演劇『コノハナ・アドベンチャー2』では、
「未来食堂コノハナ」として舞台のひとつにもなっていました。
その時の舞台装飾の銀色のペンキで塗られた壁が今もそのまま残っています。

FIGYAの1階の奥の部屋は、もとは倉庫。真っ白く塗装され、映像などの展示室に。

2階の和室をそのまま展示室に。

3軒目は、「ASYL(アジール)」です。
OTONARI(vol.2参照)と同じ建物の中にあります。
もともとは、梅香堂というギャラリーとして使われていたスペースが、
建物が持っていた雰囲気を尊重しながら、
現在、共同アトリエとして活用されています。

アーティストの前谷康太郎くんを中心に、
作品の制作場所になっています。
今後は展覧会の企画なども考えているそうです。
週末には、楽しそうな声が聞こえてきます。
写真は、FIGYAで開催が始まったボン靖二の個展のオープニングの様子です。

FIGYAで開催されている個展のオープニングパーティの様子。手前の天井が低くなっている部分は、上がロフトになっています。

まちのリズムを受け入れる

紹介しだすと切りがないのですが、
それぞれが独自のスタイルで日々運営されていて、
付かず離れず、良い距離感で共存しています。
僕らNO ARCHITECTSも、事務所を移して3年半、
住み始めてようやく1年が過ぎました。

連載を始めたころから思い返してみても、
既存の建物を使いながらも、新しく生まれる場所もあれば、
惜しまれながらもなくなっていく場所もあります。
すべてをポジティブに受け入れて、
未来を見守る優しいまなざしのようなものが、
まちに関わる人たちには大事だと思うようになりました。

都会ではあまり実感することができない
「人との距離感」や、「まちの音」、「生活のリズム」が、
個人的な日常の暮らしを通して感じられること。
今しかない時間を共有しているということを味わいながら、
このまちで、日々活動をしています。

これからも、このはなの物件はもちろんですが、ほかのまちでも
そのまちを気に入って住み始めたり、
まちとつながるオープンなスペースを持ちたいと思った人などに対して、
リノベーションを通してサポートができれば幸せだなと思っています。

事務所の屋上から見る夕陽。手前の建物は、最近、解体されてしまいました。日々、景色も変わっています。

ひとまずNO ARCHITECTSの連載はここで終了ですが、
また、まちの様子など報告できたらと思っています。
今回初めて読んでいただいた方、続けて読んでいただいていた方、
どうもありがとうございました。また会う日まで。
このまち、このはなでお待ちしてます。

information


map

NO ARCHITECTS

住所 大阪市此花区梅香1-15-20
http://nyamaokud.exblog.jp/
https://www.facebook.com/NOARCHITECTS.jp

information

四貫島PORT

住所 大阪市此花区四貫島1-6-6
http://shikanjima-port.jp/

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