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NO ARCHITECTS vol.5:
クリエイティブな場所をつくること

リノベのススメ
vol.020

posted:2014.3.3   from:大阪府大阪市此花区  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。

writer's profile

HIROSHI NISHIYAMA

西山広志

1983年大阪生まれ。建築家。NO ARCHITECTSを共同主宰。神戸芸術工科大学デザイン教育センター非常勤講師。神戸芸術工科大学大学院芸術工学専攻 (鈴木明研究室) 修了後、2009年 奥平桂子と共に活動を開始。2011年事務所を此花区に移すと同時に〈NO ARCHITECTS〉設立。建築をベースに、設計やデザイン、インスタレーション、ワークショップ、まちづくりなど、活動は多岐にわたる。

NO ARCHITECTS vol.5
建物全体を使いこなす。

僕らがこのはなに関わるきっかけにもなった、初めての仕事の紹介です。
それは、NO ARCHITECTSの事務所づくりです。
今回は事務所が入っている建物ごと紹介しようと思います。
名前は、宮本マンションと言います。

2010年の1月頃、大学の先輩で工務店のPOS大川 輝さんに、
事務所をシェアして借りないかと誘っていただき、
宮本マンションの2階の部屋を共同で借りることになりました。
場所は、OTONARI(vol2参照)が入る建物の斜め向かいです。
僕らが今住んでいるSPACE 丁の「大辻の家」からも歩いて5分ほどです。

事務所の窓から見えるOTONARIの建物。改装中は、塗装作業の養生がカーテンになっていました。

このはなに通うようになって感じたのは、
まち全体にクリエイティブな空気が満ちていること。
近所のギャラリーでは展覧会の準備をしていたり、
アーティストの共同アトリエでは作品をつくっていたりと、
仕事場を据えるにはとても魅力的な場所だと感じました。

僕らが借りる宮本マンションの、他の入居者も、クリエイティブな仕事に関わる人ばかり。
1階はアート系NPOの倉庫兼イベントスペース。
正面の駐車スペースは、簡単な木工作業や塗装作業などの工房として使わせてもらっています。

1階の工房にて塗装作業をしているところ。

2階は、僕らの事務所とミュージシャンの住居、3階は画家のアトリエ兼住居、
4階の洗濯機置場の奥には、100円で入れる共同シャワーがあります。
ちょっと前までは、近くに住むアーティストやDJなどもよく入りに来ていました。
シャワー室の中の絵は、vol.1でも登場した画家の権田直博さんによるものです。
六軒屋川沿いの宮本マンションに因んで、
「宮本ロッケン湯」という名前も付けてくれました。

入口脇には使い方の注意が貼られています。基本的には外付けシャワー室です。

共有スペースの屋上は、季節の良い時期はバーベキューをしたり、
壁にプロジェクションして映画を観るイベントをしたり。
大阪の夏の風物詩、なにわ淀川花火大会をみんなで見たりもします。

屋上からの景色です。夕陽がとてもきれいに見えます。

何もない場所を共有することで、人が集まる仕組みやイベントを通して、
自然とコミュニティが形成されていきやすい状態が生まれています。

事務所の2周年パーティの様子。暴風雨の中でしたが、60名以上の方にご参加いただきました。

あと、1階から屋上までひとつながりの階段と廊下は、
階段ギャラリーとして、僕らが入居する前から、
時折、住人主催で展覧会などが企画されています。
日常的に絵が見られる環境は、とても幸せです。

階段ギャラリーの管理人でもある画家の梅原彩香さんの展覧会の様子。

さて、事務所スペースのリノベーションの話です。

まずは、不要な壁を解体し、大きなワンルームにしました。
黄ばんだ壁と天井をペンキで白く塗り直し、
キッチンとトイレは壁と連続した白い箱のなかに。

床は、ほこりをいっぱい吸ったカーペットは剥ぎ取り、
ベニヤ板を張り巡らせて、薄めた防水塗料を二度塗りしています。

床が完成した日の朝。

そのときどきで、プランが簡単に変えられるように、
壁を立てるのではなく、スペースごとに本棚をつくって間仕切りしています。
棚の上段にいくほど、一段の高さを低くし、奥行きも短くしていくことで、
少しでも圧迫感が減るように設計しています。
こういう細かいところが、居心地の良さにつながります。

さらに本棚には、高さや背板の有無で、間仕切りのグラデーションもつけています。
シェアオフィスでの一番の課題は、
スペースごとの関係性をどうコントロールするかにあると思います。
うちの事務所の場合は、公私ともに仲良しだったので、
空間の広さを最大限に生かした、割とオープンなプランになっています。

キッチンとトイレが入った箱とリビングの境界は、扇型のカーテンを付けました。

アイデアが浮かぶ場所。

クリエイティブな場をつくるときに心がけていることがいくつかあります。
ひとつは、頭のなかの思考を邪魔するようなデザインはしないこと。
壁や天井はできるだけ色やつくり方もシンプルにして、
本やオブジェ、机に置かれた書類、壁に貼られた紙などが、
頭のなかにプカプカ浮いているような状態を目指しています。
余計な情報はできるだけ削ぎ落とすようなイメージです。

このはなに来る前の事務所スペース。当時の自宅の一室をカーテンで囲み、仕事をしていました。

もうひとつは、できるだけ大きな机をつくることです。
視覚と思考は繋がっています。
机の上でいろいろな情報を並列に整理することを助けます。
また、多くの人とコミュニケーションが可能な状態をつくっておくことは、
よりよいプロジェクトにするためには欠かせません。

大阪市立大学 都市研究プラザのひとつ、クリエイティブセンター阿波座(CCA)のリノベーションの例。

最後に、しっかりリラックスできる場所を用意することです。
パソコンやデスクに向かって考えることも重要ですが、
ソファでお茶を飲みながら休憩していると、
自然に点と点が繋がって、良いアイデアが浮かんだりします。

最近、シェアしていたPOS大川さんが
モトタバコヤの2階に事務所を移したことをきっかけに、少しプランニングも変えました。

NO ARCHITECTS の事務所スペースは窓際に寄せて、フリースペースを広げました。

そんな風に、その時その時の状態に合わせて使い方を変えながら、
日々働いています。

フリースペースは、模型をつくったり、大人数の打ち合わせなどで使ってます。

実は、僕らの事務所NO ARCHITECTSは、
オフィスをシェアしてくれる方を募集中です。
プランも話し合って考えましょう。
このはなで、一緒に仕事しませんか?

NO ARCHITECTS の楽しい仕事をより多くの人と共有するために、学生さんたちとチームをつくりました。メンバーも募集中。

information


map

NO ARCHITECTS

住所 大阪市此花区梅香1-15-20
http://nyamaokud.exblog.jp/
https://www.facebook.com/NOARCHITECTS.jp

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