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二足、三足のわらじを履く
「らんぷはうすのお母さん」に
下田の民謡舞踊を習う|Page 3

暮らしを考える旅 わが家の移住について
vol.022

Page 3

「らんぷはうすのお母さん」との出会い

そもそもお母さんとの出会いは物件を借り始めた4月のはじめ、
鍵の受け取りのために僕ひとりでやってきたときのことでした。
まずはどこかで腹ごしらえをと、記念すべき下田暮らし初の朝食を
どこでとるかネットで検索して探しました。

なになに……〈らんぷはうす〉という店の干物定食が人気らしい。
地元の干物屋さんの干物を定食にしてお腹いっぱいにさせてくれるとのこと。
朝6時からやっているという気合の入り方も気になります。
ここだ! と期待に胸を膨らませ店に向かいました。

そして……。

スナック? 喫茶店? 

僕のイメージする干物の朝定食を出す店の雰囲気と
あまりに違うことに少なからず尻込みしながら店に入りました。
店内も干物定食イメージをはるかに超えるカオス感……。

そして、笑顔のチャーミングなお母さんが
カウンターの中で出迎えてくれます。
「開きは鯵。丸干しはサンマ。
サンマの丸干しはもうすぐ終わりだからおすすめだよ。どっちにする?」

悩む……。干物といえば鯵の開きな気もするが
時季的にもうすぐ食べられなくなるという丸干しも気になる。
結局、「もうすぐ終わり」という決め台詞に惹かれて
サンマの丸干しをオーダー。そして出てきた定食が……。

ツボです。最高です。これぞ求めていた朝ごはん。
干物の焼き加減。しっかり漬かった漬物。
副菜のボリューム。具沢山の味噌汁。
さらに納豆がパックのままでなく小鉢に入ってネギと鰹節がかかっています。

そんな細やかな配慮に愛を感じます。
ちなみにこのボリュームで財布にやさしい600円。
店のカオス感もすでに心地よくなっていきました……。

テーブルにはオリジナルマッチ。喫茶、スナック。民舞教室……??

おいしくいただいて、お腹も心も満たされました。
僕の前に来ていた常連さんらしきお客さんも帰り、店内には僕だけ。
ここでお母さんと話さない手はない!

「実は今日から下田に暮らし始めることになりました!」
お母さん、すごく喜んでくれました。
「あらそうなの! ようこそ!」
ニコっと笑った顔が忘れられません。

お店とお母さんについていろいろと聞いてみました。
お母さんはここで、らんぷはうすを昭和56年に創業して以来、
下田のまちを見続けてきたそうです。

朝6時からの昼過ぎまで定食屋としての営業のほかにも、
予約が入れば夜はカラオケスナックとして営業。
そして、店だけでなく下田の魅力を観光客に伝えたいと
ボランティアで観光ガイドをしていたり、
育児中の母親を支援するボランティアをしていたり。
さらに、地域の方々に民謡舞踊を教えているというのです。

何足のわらじかわからないくらいですが、
忙しいはずのお母さんはとにかく元気で楽しそう。
生き生きとしているのです。

そんなチャーミングなお母さんと愛あふれる定食に
すっかり惚れてしまった僕は
「今度は家族を連れて来ますね~」と店をあとにしました。

らんぷはうすは昔ながらの天日干しの干物屋が軒を連ねている「干物横丁」と呼ばれるエリア(PDF地図)にあり、そのうちの一軒から仕入れているそうです。天気が良くない日には干物がつくれず安定して生産できないことから、多くの店では天日干しから機械干しに変わりました。天日干しならではの旨みを感じます。なかには冷凍のストックもしていない店もあり、雨の日には売り物がないということも。経済効率優先の都会では考えられない自然に沿った商売のあり方です。