colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧

連載

〈北海道アール・ブリュット〉で
造本作家・駒形克己さんが語った
“共有”する絵本づくり

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.033|Page 3

posted:2016.12.22  from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

Page 3

駒形さんは視覚障がい者との絵本づくりを通じて、
大切なことを彼女たちから教わったという。

「感覚機能の一部を失ってしまうと、コミュニケーションにおいては
不便さをともなうと思います。ところが実は、わたしたちのほうが、
とても不便になってきているなと感じるようになりました」

駒形さんがこのとき見直したのは、わたしたちのコミュニケーションの在り方だった。
電子メディアが発達し、メールやSNSのやりとりが増えたことで、
身体を通じたコンタクトがとても苦手になっているのではないかと
考えるようになったという。

「絵本のサンプルを見せるために、盲学校を訪れたことがありました。
何度か訪ねるうちに、生徒のひとりが、わたしの顔を確かめるために
両手で触ってくれました。その手はとてもやさしくて、
わたしのことを一生懸命知ろうとしてくれるひたむきさに心が動きました。
メールでの連絡は迅速に事が進みますが、信頼関係を育むということにおいては、
別の行為が必要なんじゃないかということを学べたように思います。
また、わたしは大学で教えてもいますが、学生たちと接するなかで思うのは、
人間は便利さよりも、むしろ不便さのなかから育てられるのではないかということです」

ポンピドゥー・センターとつくったもう1冊の絵本『leaves』。視覚障がい者に四季を感じてもらえる絵本ができないだろうかと考え、季節によって変化する葉の形を紙を切り抜き表現した。

葉の形の変化とともに、紙の質感にもこだわった。葉の種類に合わせ、さまざまな手触りの紙が使われた。

そしてもうひとつ、駒形さんが障がいのある人々と接するなかで強く感じた、
ある想いについても語ってくれた。

「わたしのとても嫌いな言葉に『してあげる』というものがあります。
わたしたちは障がいがある人に対して、
つい『してあげる』という言い方をすることがありますよね。
これを漢字に置き換えると“上”という字を書きます。
一方『してください』という字は“下”という漢字を書きます。
こんなふうに知らず知らずのうちに
自分が上位にいるという感じを持つこともありますが、
わたしは常に平らなところで仕事をしたいという心情をもっています」

平らなところで仕事をするために、駒形さんがキーワードとして考えていたのは
“共有”という意識。

「わたしは視覚障がい者の気持ちを理解するチャンスになればと思い、
目隠しをしながら作品づくりをする〈タクタイル〉という
ワークショップを行っています。
このような理解する努力を、わたしたちは『してあげる』のではなく
『していきたい』という前向きな意識をもって行うことができたらいいですよね。

また、本当に豊かな社会とは何だろうと考えたときに、
今回展示されたアール・ブリュットの作品のように、
それぞれの個性を伸ばしていくことが大切なんだと思います。
競い合って同じようなものをつくるよりも、
個性を生かし共生に向かう社会を目指していきたいと考えています。
そのために、上下の関係でなく、互いに“共有”するという意識をもっていたい。
この“共有”というプログラムを、本づくりやワークショップなど
いろんな場で展開できたらとわたしは考えています」

『Little tree』は、イタリアで毎年開催されるボローニャブックフェアにて、2010年のラガッツィ優秀賞を受賞した絵本。木が時間とともに移り変わっていく様子を、繊細なポップアップによって表現した一冊。駒形さんの絵本は、〈ONE STROKE〉で購入可能。

Recommend