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連載

自分でつくって、自分で売ろう!
岩切エミさんの地域を巻き込む
手仕事プロジェクト

うちへおいでよ!
みんなでつくるエコビレッジ
vol.023

posted:2016.7.14  from:北海道岩見沢市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。
http://michikuru.com/

手づくりを通じて人々とのつながりをつくり出す

アクセサリーデザイナーの岩切エミさんが、わが家にやってきた!
毎年、必ず来てくれて、子どもたちと思いっきり遊んでくれるエミさんは、
笑顔を運んでくれる大切な友人だ。

エミさんとの出会いは10年ほど前、
私が東京で『みづゑ』誌の編集長をしていた頃に取材をしたのがきっかけ。
以来、家族ぐるみでおつきあいをさせてもらっている。
彼女は、デザインしたアクセサリーを全国のショップやギャラリーなどで
販売する活動をしていて、私が岩見沢に移住してからも
北海道のイベントに参加する折りに会う機会をつくってくれるのだ。

岩切エミさん。1996年からアクセサリーやファッションのブランド〈car*g*mom〉を展開するかたわら、NHKの番組『すてきにハンドメイド』などにも出演。かぎ針編みのアイデアがつまった書籍なども刊行。手仕事の大切さ、手づくりの楽しさを伝える活動を続けている。

今夏も、エミさんがわが家を訪ねてくれることになったので、
ぜひどこかでイベントを開催したいと考えていた。
2年前にエミさんのアクセサリーづくりワークショップを
岩見沢の市街地で開催したことがあるが、
今回は、いま私が空き家を改装してゲストハウスのような場所づくりを計画中の
岩見沢の山間部・美流渡(みると)地区で開催したいと考えていた。

ちょうどタイミングよく、先月、美流渡で
〈東部丘陵地域(美流渡を含む岩見沢の山間部の地域のこと)未来会議〉として、
イギリスのエコビレッジとトランジッション・タウンを視察してきた、
岩見沢在住の林睦子さんの報告会(前回連載参照)を開催したこともあり、
美流渡の友人たちと相談して、この会議の第2弾として、
エミさんのイベントを企画してみようということになった。
イベントは2部構成にし、午前中は手づくりの楽しさを伝える親子ワークショップ。
午後は、エミさんのこれまでの活動を振り返るトークと
参加者による意見交換を行うことにした。

7月3日、イベント当日。
午前中に行ったのは、子どもにエコバッグに絵を描いてもらい、
そこに親が刺繡を加え完成させるというワークショップだ。
2〜8歳くらいまでの子どもたちが集まり、サインペンで思い思いの絵を描いていった。
「子どもの絵を消さないように、ポイントポイントに
刺繡やスパンコールをつけていくといいですよ」
そんなエミさんのアドバイスを聞きながら、お母さんやお父さんたちは、
机いっぱいに並んでいる材料から好きなものを選んで、チクチク針仕事をしていった。

エミさんが作例としてつくってくれたバッグ。わが家の2歳の娘と5歳の息子が絵を描き、そこに刺繡をしてくれた。

まだ形が描けない2歳児の線に合わせて刺繡をするだけでも、見違えるようにかわいいバッグに!

黒1色のサインペンで描かれた絵も、刺繡を入れていくと、
なんとも愛らしいデザインに変身!
玉止めした糸をあえて外に出すなどラフさがちょうどいいバッグができあがった。
「私は自分で何かをつくることも好きだけれど、ものづくりのきっかけをつくって、
みんなでその楽しさを共有したいと思っているの」
できあがったバッグを見て、エミさんもうれしそうな表情でそう話してくれた。

子どもたちも真剣。黒いサインペンだけでなく、色つきのペンで思い思いの絵を描く。

最近エミさんは、自身の肩書きを「クラフトコミュニケーター」という、
自身で考えた造語に変えようかと思っているという。
作家としてものづくりをするだけでなく、手仕事を通じて人と人とをつないでいく、
そんな役割を担っていきたいのだそうだ。

子どもたちののびのびした線。「これを消さないように刺繡やスパンコールをつけてみては?」とエミさん。

完成! それぞれの個性が光るバッグができあがった。

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エミさんが地域のものづくりでやろうとしていることは?

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手仕事によって、地域の小さな経済をまわす試み

午後に行ったのは、「自分でつくって、自分で売ろう!
地域をまきこむ手仕事のチカラ」と題したトークイベント。

なぜ、東部丘陵地域未来会議のゲストにエミさんを呼びたいと思ったのかと言えば、
美流渡の人々に彼女のこれまでの活動について知ってもらいたかったからだ。
過疎化が進む美流渡地域では、仕事をしたくても就職先はほとんどない。
そんななかで、エミさんがこれまでさまざまな地域の人々とものづくりを行い、
その土地に仕事をつくる活動をしてきたことが、
何かの参考になったらと思っていたのだ。

トークでまずエミさんが紹介してくれたのは、バリ島でのものづくりだ。
あるときこの地を旅し、自然や人々にすっかり魅了された彼女は、
毎年ここに来たいと思うようになり、自身がデザインしたアクセサリーを
バリ島の人々につくってもらうことを思いついたという。
「仕事をつくれば、自分がここに来る理由にもなると思って(笑)」
刺繡を細かく施したアクセサリーパーツの制作を依頼し、
バリ島の人たちが一針、一針それを縫って納品するという態勢が生まれていった。

バリ島の人々とつくったアクセサリー。

バリ島では、エミさんがつくった書籍『アクセサリークロッシェ』の撮影も行われた。余り糸を使って編み上げたブランケットなど、豊かな発想のカギ編み作品が多数収録されている。

その後、今度は友人が暮らしていたことから
沖縄・宮古島を訪ねたことがきっかけとなり、2年間、宮古島に移住した経験もある。
このときも地域の人々と一緒にアクセサリーづくりを行った。
現在エミさんは東京へ住まいを移したが、
いまでも宮古島の人々とのものづくりは続いているという。
「私が発注主で利益を上げたいというよりも、地域の人々と小さな経済をまわして、
それをみんなでシェアしたいという気持ちがあるんですね」

使われなくなったカシミアのセーターを短冊状に切って丸めてアクセサリーのパーツに。宮古島の人々がこの作業に当たっている。エミさんはこうしたリメイクを通じて独自のアクセサリー作品を生み出している。

各地の人々との手によってアクセサリーが完成。写真はギャラリーでの販売の様子。

こうした想いは、東日本大震災の被災地である東北でも新たなプロジェクトを生んだ。
そのプロジェクトとは〈EAST LOOP〉。
震災以降、被災した人々の仕事づくりをしたいと考えていた高津玉枝さんが、
エミさんと出会ったことによって、活動が具体的に動き出すこととなった。

フェアトレードによる途上国支援を行ってきた
〈福市〉という会社の代表であった高津さんは、自分のこれまでの経験を生かして
被災地の支援ができないかと当時考えていたという。
そのとき、場所をとらず自分のペースで仕事ができる
カギ編みで何かをつくって販売することを思い立ち、
そのデザインをエミさんに依頼した。
エミさんはカギ編みでできるハートのブローチを考え出し、
それを東北の人々が編み、全国で販売されるようになった。

2011年夏から始まったEAST LOOPの活動は、
約3年間でおよそ7000万円を売り上げ、その半分がつくり手に届けられたという。
現在は、母体が岩手にある〈東北クロッシェ村〉に変わり、
地域の人々が自ら運営する態勢へとシフトしている。

エミさんがデザインしたカギ編みのハートのブローチ。台紙の裏には、編んだ人が住んでいる地域と名前が記載されている。

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エミさんがものづくりで大事にしていることは?

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エミさんの一言が、美流渡の人々を動かした!

エミさんのトークを踏まえつつ、後半ではトークに参加した人々に、
「自分が売ってみたいものとは何か?」というアイデアを紙に書いてもらい、
それをもとに美流渡でどんな経済活動が生み出せるかを考えるワークを行った。
参加者が書いた紙には、

「育てたハーブを加工して売ってみたい」
「樹のツルなどを使ったリースを売ってみたい」
など、地域で採れるものを生かしたものづくりの提案があった一方で、

「空き家に眠っている家具や建材などを売ってみたい」
「農家で大量に出る材木や古道具を売ってみたい」
など、いま目の前にある使い道のないものを販売したいという意見も多かった。

参加者の意見をグループ分けしていくエミさん。

こうした意見を実現化するためのアドバイスとしてエミさんが挙げたのは、
まず具体的な目標を持つこと。
例えば、美流渡というまちを基準にして考えるならば、どのくらいの経済を生み出して、
どのくらいの人々が暮らしていけるといいのかについて、
まずはみんなでビジョンを共有してはどうかと提案してくれた。
そうすれば自ずと生み出さなければならないものの量が見えてくるはずというエミさん。

「美流渡で何かを生み出したいと思ったら、
そのスタートは3人くらいの仲間でもいいんです。
その人たちが本当に楽しそうにやっていたら、
必ずほかの人が集まって広がっていくもの。
できるだけオープンでフラットな空気で進められたら
プロジェクトはよい方向に行くものですよ」

エミさんの言葉には、とても説得力があった。
バリ島や宮古島などのものづくりでも、
最初はほんの数名の友人のつながりから始まっていた。
そして、仕事と言いつつも本当に楽しそうで、誰でも参加できそうな
オープンな雰囲気づくりがエミさんはとても得意。
知らず知らずのうちにエミさんのまわりには人の輪が生まれ、
活動が大きく広がっているのだ。

また、もうひとつ、エミさんがいつもものづくりで大切にしていることを教えてくれた。
「いちばん大切なのは、地域のありのままの良さを見つけること。
ありのままのものを、うそをつかずに素直に出すことが大切。
カッコつけて外見ばかりを気にしていると、それは偽物になってしまうから」

このトークは、美流渡で新たな手仕事を生み出す大きなきっかけとなった。
実はトークの後に、エミさんからこんなお誘いを受けたのだ。
毎年、札幌市資料館でエミさんが仲間たちと開催しているイベント〈From HAND〉に、
来年、展示室の1室を借りて美流渡チームも出展してはどうかというのだ。
From HANDは、北海道や東京の作家たちが集まって、
バッグやアクセサリー、洋服など手仕事の品を販売するイベントだ。
美流渡の魅力を外へ発信するチャンスになるが、正直に言って、
美流渡チームには、まだ具体的なアイデアがあるわけではないのだが……。

おそらくこのプロジェクトの中心メンバーとなるであろう、
美流渡の地域活性化を目指すNPO〈M38〉の代表・菅原新さんは、
この申し出を聞き、一瞬躊躇している様子だった。
しかし少しして……
「……わかりました! やりましょう!!」と声を上げた。
エミさんのトークのときの
「やると決めたら、その日に向かって逆算して動けば、事は進むよ!」
という言葉に押されて、思わず菅原さんも「やる!」という言葉が出たようだ。

札幌市資料館は、1926年に建てられたもので、国の登録有形文化財に選定されている。部屋の一部はギャラリーとして使用され、さまざまなイベントが行われている。

エミさんらが参加している〈From HAND〉。今年は7月5日より開催され、6人の作家が集まった。

エミさんのパワーは、まさに台風並み!
東部丘陵地域未来会議と称して、
ゆるゆると地域の未来について考えていくような雰囲気だったが、
必ずやらなければならない目標が急に現れたことで、
エンジンが勢いよくかかったような感じだ。
ということで、私もこのプロジェクトの参加を表明。
来年のFrom HANDは4月初旬に開催だ。準備期間は約8か月。
あんまり時間がないけれど、もう後には引けない!
ということで、美流渡チームの今後の展開にご期待ください!!

東部丘陵地域未来会議、第3弾の開催も決定! 岩見沢の地域おこし推進員(協力隊)の吉崎祐季さんによる企画で、美流渡の空き家巡りと福岡県全域で起こっている空き家をリノベーションしたまちづくりの試みのリポートを実施。

information

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東部丘陵地域未来会議 vol.3 
美流渡ビンテージ古屋巡り&福岡diyリノベ旅報告会

日時:2016年7月30日 10:00~15:30

会場:美流渡コミュニティーセンター(北海道岩見沢市栗沢町美流渡栄町93-4)

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