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つくり手の顔が見える、
豊かな食卓。
淡路島のさつまいも料理から
感じた大事なこと。|Page 2

美味しいアルバム
vol.020

Page 2

る日、自宅に大きな段ボールがひとつ届いた。
ずっしりと重い箱を開けてみると、中には新米やさつまいも、栗にすだちなどなど、秋の味覚がぎっしりと詰まっていた。
送り主は淡路島の長沢に住む緒方信子さん。

「大好きな秋、食欲の秋、味覚の秋がやってきました。
主人の大好きな新米が収穫されました、ぜひ食べてほしくて。
長沢の味を送ります。緒方信子」

という絵手紙が添えられていた。箱いっぱいに詰まった土の香りに触れたら、信子さんの言葉をふと思い出した。

「お金はなくても心は豊か、それが一番やね」

風が抜けるテラスで、軽やかに笑っている信子さんの姿が思い起こされた。

ここ数年、淡路島に何かと縁がある。

初めて足を踏み入れたのは2年前のこと。

出張で神戸へ行くことになり、以前から気になっていた淡路島を訪ねてみることにしたのが始まり。その後も撮影で行ったり、地元の方が開催しているイベントに参加させていただいたりと、たびたび足を運ぶようになった。
訪れるたびに島の魅力に触れ、親近感と愛情がどんどん募っていく。

昨年の夏もまた、淡路島で開かれるイベントへ行くことになった。
イベント自体は半日なので、ついでに何か取材ができないかと、インターネットで情報収集。すると、気になる記事を見つけた。

地元のお母さんが、土地の大根を使っておいしそうな郷土料理をつくっている。読み進めてみると、ご自宅は栗や柿の木などに囲まれた自然豊かな環境で、ジャムやら豆腐やらなんでもご自身でつくってしまうのだそう。
写真から伝わってくるその豊かな暮らしぶりに、一瞬にして心を奪われた。

お会いしてみたい。

連絡先を探すと、観光農園〈あわじ花の歳時記園〉を営んでいる方とわかり、電話をかけてみた。

張りのある声で電話口に出てくれたのが、緒方信子さん。

インターネットの記事を拝見し取材させていただきたいのだと伝えると、
「どうぞどうぞ」とすぐさま快諾してくれた。さらに、あんな料理もこんな料理もできるけど、さあどうする? という具合に、次から次へとアイディアをいただくものだから、なかなかメニューが決まらない。

結局その日の電話では結論がでず、その後何日もかけて電話でご相談させていただいた。突然連絡をしたにもかかわらず、こんなに熱心に対応してくださるなんて、本当にありがたい。

数日後にようやく決まったメニューは“さつまいも料理”。
長澤地区でも栽培がさかんに行われていて、まさに秋が旬なのだそう。

「このあたりで採れるもんは、ほんまおいしいんよ。
それを食べているだけで幸せよ~」

そんなはつらつとした信子さんの声を聞いていたら、今回の旅がいよいよ楽しみになってきた。