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福山のコーヒー的習慣

マチスタ・ラプソディー
vol.035

posted:2013.1.10   from:岡山県岡山市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  東京での編集者生活を経て、倉敷市から世界に発信する
伝説のフリーペーパー『Krash japan』編集長をつとめた赤星 豊が、
ひょんなことから岡山市で喫茶店を営むことに!? 
カフェ「マチスタ・コーヒー」で始まる、あるローカルビジネスのストーリー。

writer's profile

Yutaka Akahoshi

赤星 豊

あかほし・ゆたか●広島県福山市生まれ。現在、倉敷在住。アジアンビーハイブ代表。フリーマガジン『Krash japan』『風と海とジーンズ。』編集長。

激動の年末年始。

このお正月にあった今年初のコーヒー的体験をひとつ。
場所は福山のカフェ<nanairo(ナナイロ)>。
何を食べても抜群に美味しくて、広島方面に行った際は帰りに必ずここに寄る。
というか、年に何回か訪れる尾道や福山への小旅行は
このカフェでの夕飯ありきで計画されていたりする。
以下はそのカフェで1月3日に目撃した出来事である。
ぼくは入ってすぐのところにあるソファ席で友人の一家と夕飯を食べていた。
と、ふらりと店に入って来た20歳代の男性がふたり。
ともに黒っぽいニットキャップをかぶった彼らは、つかつかとカウンターに近づいて、
エスプレッソをふたつオーダーした。そしてカウンターの一角にある、
椅子のない、立ち飲みのスペースで出てきたエスプレッソをものの2、3分で飲み干すと、
「どうも!」とだけ言って、また来たときのようにふらりと店を出て行ったのだった。
その一連のシークエンスを無言で眺めていたぼくはといえば、若干シビれていた。
そんなカッコいい光景がミラノでもNYでもなく、この日本で、
しかも岡山よりもさらに人口の少ない福山で見られようとは思いもしなかったのだ。
ぼくが目にしたようなコーヒー的習慣が若者の間で根づいているとしたら、
福山、かなりヤバい。

正月に見た光景があまりに鮮烈だったので、
そのたった2日後にまた福山の<nanairo>を訪れた。店に入るなり、
店主のジャリくんにそれとなく彼らのことを聞いた。
「おとといの晩、エスプレッソだけ飲んで帰った若い子たちがいたよね、
彼らはああやってよく飲みに来るの?」
「いえ、彼らはたしか店に来たのは2回目です」
うん……?
「エスプレッソだけ飲みに来るお客さんって結構いるの?」
「ほとんどいないですよ。
だってうち、エスプレッソよりもマンゴージュースの方が出ますもん」
というわけで、あれはお正月の幻みたいなものだったことが判明した。
でも、あの幻はいまもぼくのなかで特別な輝きを放っている。

年が明けて、我が社アジアンビーハイブのデザイン担当ヒトミちゃんが
FA権を行使することなく、残留することが決定した。
彼女が会社を辞めてフリーのイラストレーターになるか、
そのまま会社に残るかは五分五分とふんでいたので、
双方の場合をシミュレーションしてはみたが、
「辞めます」と言われた場合はどうしていいかよくわからなかった。
シミュレーションといっても、途方に暮れて佇むぼくのそばで
サブがクンクン泣いている絵が浮かぶばかりだった。とりあえずはよかった。
「これで会社も安泰」と言えたらいいんだけど、
創業以来、うちの会社が安泰であったためしがない。
今年も例にもれずで、新年早々から結構なクライシスにある。
目下、昨年春に融資を受けたT銀行に二度目の融資のお願いをしているところ。
「最悪、社長が個人で借り受けして、会社に貸すというカタチもありますが」
担当のシマちゃん、そんなことをおっしゃるってことは融資しにくいのかな?
顔もあきらかに「困ったちゃん」風だ。
「個人で借りた場合の利率はどうなってるの?」
案の定、高かった。
銀行って、預けたときの利率と貸したときの利率に
なんでこんな開きがあるかなあ、いまさらだけど。
というわけで、現在は銀行の決定を待っている状態なのだった。
頼むよ、シマちゃん!

さて、残る人もあれば去る人もありというのが世の常。
昨年12月でコイケさんがマチスタを離れた。
で、のーちゃんと相談した結果、ぼくが平日の午前中9時から12時までを担当し、
12時から閉店の午後7時までをのーちゃんが受けもつこととなった。
(今年から月曜日を定休日とし、営業時間を朝と夕それぞれ1時間短縮しました)
なんと、このぼくがマチスタの朝の顔。
東京にいる頃は、フジテレビの『ペット百科』の放映時間に合わせて、
午前11時20分を起床時間としていたこのぼくがである。
そんなわけで、午前は岡山のマチスタ、午後は児島のアジアンビーハイブという生活が
すでにスタートしてすでに数日が経過している。
数日しか経過していないけど、わかったことは少なからずある。
たとえば、朝利用する7時58分早島駅発岡山駅行きの電車が、
本を読むこともままならないほど混んでいるということ。
午後の労働時間があまりに短くて、気を抜くと何もしないままに夕方を迎え、
「あれ、そろそろマルナカに夕飯の買い物に行かなきゃ」
(マルナカは近所にあるスーパーのチェーン、
昨年イオングループ傘下となった)ということになったりする。
いずれにしてもこれまでの瀬戸内海的な温い生活とは大きく違って、
なにかとガチャガチャ慌ただしい。
一方、静けさに満ちているのが午前のマチスタ勤務。
3時間でふたりとか3人とか、
毎日がそんなだからいたって平和、ってこれじゃいけないのだ。
朝の活気をぼくが創りだしていかなきゃいけない。
いまのマチスタにとってそのハードルはそそり立つほどに高い。
でも、高いからといってあきらめたくない。
まずは一歩だ。一歩を踏み出すことから始めようと思っている。

ヒトミちゃんも<nanairo(ナナイロ)>のハンバーグの大ファンで「お母さんの次に美味しい!」と10歳児のように絶賛。本や雑誌のセレクトも実にセンスよし! 
住所 福山市三吉町3-10-7 TEL 084-921-3016

最初の第一歩といえば、ぼくの場合やっぱりビラでしょう。新年早々、毎朝店頭に立ってビラ配りしてます。内容は1月15日から1か月間の割引サービス(午前中に限る)。「忙しゅうてかなわん!」と悲鳴をあげてみたい。

Shop Information


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cafe-nanairo

住所 広島県福山市三吉町3-10-7
TEL 084-921-3016
営業時間 11:30 〜 24:00 火曜定休
http://cafe-nanairo.jimdo.com/

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マチスタ・コーヒー

住所 岡山県岡山市北区中山下1-7-1
TEL なし
営業時間 火〜金 9:00 ~ 19:00 土・日 11:00 〜 18:00 月曜定休

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