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アジアン・コーヒーキャンペーンの全貌

マチスタ・ラプソディー
vol.025

posted:2012.7.25   from:岡山県岡山市  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  東京での編集者生活を経て、倉敷市から世界に発信する
伝説のフリーペーパー『Krash japan』編集長をつとめた赤星 豊が、
ひょんなことから岡山市で喫茶店を営むことに!? 
カフェ「マチスタ・コーヒー」で始まる、あるローカルビジネスのストーリー。

writer's profile

Yutaka Akahoshi

赤星 豊

あかほし・ゆたか●広島県福山市生まれ。現在、倉敷在住。アジアンビーハイブ代表。フリーマガジン『Krash japan』『風と海とジーンズ。』編集長。

ベトナムとバリのコーヒーで勝負!

久々にして、たぶんこれが最後になるであろう、500円玉貯金の話である。
2年間で20万円に達していたぼくの唯一の貯蓄なわけだが、
残念ながらもうない。しばらく前に使ってしまった。
あれだけこの連載で話題にしておきながら、
なぜにまったく触れなかったかといえば、その崩し方があまりにしょぼかった。
車の重量税5万円がどこをどうつついても都合できなかったのである。
すぐに覚悟は決まった。
「せっかくここまで貯めたのに」とウジウジするのが一番よくないのだ。
ぼくはきっちり10万円分を銀行に持ち込み、そこから重量税を、
さらに最近しつこく催促の電話をかけてくる国民年金も2か月分を支払った。
こうしてぼくの貯蓄の半分が、ウスバカゲロウなみのはかなさで消えていった。

普通の貯金なら、半分の10万円を使ったところで、
残り10万円からまたコツコツ貯めればいいだけの話である。
しかし、これが500円玉貯金の不思議なところで、
お金を使った感慨がないとリセットできないのだ
(もしかしたらぼくの場合だけかもしれません)。
先の税金の支払いに感慨なんてあるわけがない。
胸の内にはえもいわれぬ気持ち悪さがくすぶるだけである。
さて、ここからは「さあ、10万円を鮮やかに使ってみなさい」という話なのだが、
元来物欲に乏しい性質で、欲しいものがスニーカーぐらいしか思い浮かばない。
スニーカーであれば色違いを10足揃えるぐらいの
バカげたお金の使い方が好ましいのだけれど、
そんな豪気なふるまいができる人間でもない。
まさに、そんな折だった。
春に出張マチスタをやった宇野港近くの「駅東創庫」に出かけたときのこと。
そこにある友人の満田夫妻のアトリエ兼ショールームで、
連れ合いのタカコさんが革のライダースジャケットを見つけた。
ぼく以上に物欲のない彼女が、ジャケットに袖を通して鏡に映して見ていた。
一緒に買い物に行っても、ほとんど見ない光景だった。
「それ、いくら?」
彼女はジャケットを一度脱いで値札を見た。
「9万円ぐらい」
決まりだ。
「買うよ」
「ええっ? いいよ、お金ないのに」
「いや、買う。絶対買う!」
売る側の満田さんにまで「お金ないのにいいの?」と心配されながら、
半ば強引に買うことにした。
ぼく以外の人のために使うなんて、そんな選択肢があるとは思いもしなかった。
しかも、これから夏本番を迎えるという時期の革のジャケットって。
報われた、全部報われた。
20万円分の500円玉たちから拍手喝采を浴びたような気分だった。

あえて夏にホットを————。
ホットコーヒーがまったく出なくなったというところから生まれたこの戦略。
口にしてはみたものの、具体的な展開のアイデアはまったくなかった。
アイデアがまったくないまま、とりあえずコイケさんに投げかけてみた。
先週の金曜日のことである。
「アジアの豆でいくってどうですか?」
ぼくには寝耳に水の「アジア」だった。
「アジア、ですか?」
「この間、稲本さん(マチスタの豆を焙煎してくれている焙煎士です)が
もってきてくれたベトナムの豆を飲んでみたら、これが美味しいんですよ。
ベトナムっていうと、まずい豆の代名詞みたいなところなんですけどね」
アジアン・コーヒーのキャンペーンか、悪くない。さすがはコイケさん!
「もうひとつはどこだったかな……」
「インドネシアですか?」
「……わかりません。でも、明日にはもってきてくれるはずですよ」
翌土曜日。お昼頃にマチスタに行くと、
すでにコーヒーのメニューボードの一番上に
「アジアンフェア」と書いたのーちゃんの文字が。
ストロングのところには「ベトナム ソンア」、
ソフトに「バリ島 神山」とあった。
そうか、コイケさんが言ったもうひとつはバリだったのね、って展開が早いな。
言い出しっぺのぼくが取り残されてやしないか?
早速ふたつを飲んでみた。
まずはベトナムのソンア、深みがあって後口もすっきりしている。
コイケさんが言うだけあって実に良いコーヒーだった。
バリ島の神山はほどよく酸味が効いてパンチがある、ぼく好みの味だった。
コーヒーの生産国というと、アフリカや中南米というイメージだけど、
アジアの豆だってまったく遜色ない。
(アジアンフェア、これイケるかも)
早速、今週月曜日からポップの制作に入った。
火曜日か水曜日にはマチスタにアジアなデザインがお目見えする予定。
今週、アジアンフェアの評判がいいようであれば、
いきおいフライヤーを作って、8月早々にもビラ配りしてみるつもりだ。
マチスタの逆襲はアジアから始まる————。
うちの会社名からしてアジアンだしね。

イラストレーターとしてのヒトミちゃんの力量が発揮された今回の「アジアンフェア」のポップ。期間はどれくらいだろう、稲本さんに聞いておかなければ。

Shop Information

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マチスタ・コーヒー

住所 岡山県岡山市北区中山下1-7-1
TEL なし
営業時間 月〜金 8:30 ~ 20:00 土・日 11:00 〜 18:00

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