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連載

札幌のオルタナティブな発信地
〈OYOYO〉ってどんなところ?

札幌国際芸術祭(SIAF)2017
札幌へアートの旅 in コロカル
vol.007

posted:2017.9.5  from:北海道札幌市  genre:アート・デザイン・建築

PR 札幌国際芸術祭実行委員会

〈 この連載・企画は… 〉  2017年8月6日から10月1日まで開催される「札幌国際芸術祭(SIAF)2017」。
その公式ガイドブック『札幌へアートの旅』をコロカル編集部が編集しました。
この連載では、公式ガイドブックの特別バージョンをお届けします。
コロカルオリジナルの内容からガイドブックでしか見られないものまで。
スマートフォン&ガイドブックを手に、SIAF2017の旅をぜひ楽しんで!

writer profile

Chiaki Sakaguchi

坂口千秋

鹿児島県生まれ、東京都在住。現代美術関連のコーディネーター、企画・編集者、ライターとしてアートの現場に関わる。

credit

撮影:詫間のり子

〈指輪ホテル〉羊屋白玉×
〈OYOYO まち×アートセンターさっぽろ〉黒田仁智対談

開催中の札幌国際芸術祭(SIAF)2017で、重要な拠点となっているスペースがある。
電車通りと中通りの間に建つ昭和38年築の第2三谷ビル。
昭和感漂う独特の雰囲気を持つこの文化雑居ビルの6階にある
〈OYOYO まち×アートセンターさっぽろ〉は、
札幌のあらゆるカルチャーを発信するオルタナティブスペースとして
多くの人々に親しまれてきた。ビルの取り壊しが決まり、
本年いっぱいで営業を終えるOYOYOを、SIAF2017会期中は
夜のインフォメーションセンター&オフィシャルバーとして開放している。

まちの移り変わりと札幌のカルチャーを見守ってきた
OYOYOオーナーの黒田仁智さんと、
以前OYOYOで公演を行い、今回は市電を舞台に演劇を行う
指輪ホテルの羊屋白玉さんによる、どこか通じ合うふたりの”黒白“対談。

「あそこに行けば、何かおもしろいことや人が集まっている」

羊屋白玉: 私は今回のSIAFで市電を使った演劇をやるんですが、
OYOYOも市電通り沿いにあって、
まさしくここに「都市と市電」の縁を感じてます。

黒田仁智: ここは6丁目だから、市電の駅でいうと「西8丁目」と「西4丁目」の間だね。

羊屋: OYOYOの由来って何なんですか?

黒田: この第2三谷ビルが面している中通りが昔「オヨヨ通り」と呼ばれてたの。
西5丁目界隈には映画館やストリップ劇場もあってね。
いまの65歳くらいの団塊世代の人たちが20~30代だった頃、
映画や音楽、演劇をつくる連中がオヨヨ通りで飲んでは
喧嘩したり暴れたりして文化をつくっていこうとしてたんだよね。

羊屋: 黒田さんより少し上の世代が築いたカルチャー通りだったのかな。

黒田: めちゃくちゃやって反体制的で、でも自分たちで
何かつくっていこうとしてたんだろうね。
そのかわりヤクザにもやられたと思うよ。
でも俺たちのシーンをつくっていこうってことだから、
おもしろかったと思うな。

羊屋: 「オヨヨ」ってちょっと流行ったフレーズだったんですよね。

黒田: 当時、桂三枝がオヨヨって言ってたとか、
“オヨヨ大王のなんとかかんとか”とか諸説あるんだけど、
「あそこに行けば、何かおもしろいことや人が集まっている」って感じが
オヨヨ通りの代名詞だったみたいだね。
要はその辺でみんなダラダラ飲んでたんじゃない?

羊屋: いまで言うサブカルチャーみたいなもの?

黒田: サブカルすら確立してなかったんじゃないかな。
映画も音楽もきっとどうやって世に出していったらいいか
わからなかった時代だね。

羊屋: この第2三谷ビルが今年いっぱいで姿を消すって知ってるのかな、皆さん。

黒田: わからないな。でも文字にすると美しい話で終わっちゃうかもしれないね。

羊屋: みんないい思い出になっちゃう。
でも本当は言い切れないものがたくさんあったはずだと?

黒田: そうだね。

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アートだけじゃない、渾然一体の場所

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美術、演劇、どれでもない人たちの集まれる場所がOYOYO

羊屋: OYOYOを始めたのはいつですか?

黒田: 8年前かな。立ち上げ当時はいろんな部活があってね。
美術部、写真部、デザイン部、図書部とかがみんなで数万ずつ出し合って、
足りない部分はイベントやったりしながら家賃を集めて運営してた。
部活ごとにバーをやったり、自分たちでゆっくり改装して、
楽しかったけどね。

羊屋: いろんな部活を人が行き来することもあったんですか?

黒田: 曜日ごとに違う部が使ってて、俺だけここに事務所があるから
毎日いろんな活動に顔を出すんだけど、
せっかく共有してるのに意外と手を組まないんだよね。
デザインの世界はこうだから、とかアートの世界はこうだからといって
ガシャンとシャッターが降りる。もったいないなと思ってた。
結局2年でそのシステムは崩壊して、そのあと3年目くらいから
俺が直接契約して、いまの貸しスペースをベースにしたOYOYOになった。
順調になるまで最初は大変だったけどね、常に補填補填で。

羊屋: 私、最初にOYOYOのことを聞いたとき、引きこもりの子が
自分のやってることを人前で話す会みたいなことをやってる場所だと聞いて、
おもしろいなと思いました。名前にも「まち」って言葉が入ってますよね。
やっぱりここはアートだけじゃない。

黒田: まち×アートセンター。
人と人とをつなぐにはまちが一番わかりやすい言葉だからね。
借り手はほんとに幅広かった。
子どもからお年寄り、大学の先生、行政、エロ系もいたよ。
お客さん全員入れ墨だらけのパンクスとか、ミリタリーマニアの集会とかね。

羊屋: 指輪ホテルもその中のひとつ。来るものは拒まずですか?

黒田: 1回だけ断ったことがある。
海外の有名な写真家のきれいな死体の写真だったんだよね。
果たしてこの人はそれを望んでたんだろうかと自分のなかでひっかかって。
ヌードにしろお互い了承のうえで撮ってるなら構わないけど、
了承とれないからね。結局断ったけど、それ以外は99.9%オッケー。

羊屋: OYOYOは渾然一体。美術ならギャラリー、演劇なら劇場、
劇場だったら演劇やる人しか集まらないけど、
どれでもない人たちの集まれる場所がOYOYOって感じがします。

黒田: 自由度はすごく考えたね。ここは実質5割だけの場所で、
残り5割をみんなが考えてくれてたような気がする。
ちゃんと照明レールがついてたり、ステージもPAも
全部決まってる場所でしかやったことない人にはやりづらいだろうけど、
ゼロからつくる人たちには楽しかったんじゃないかな。

羊屋: 私も楽しかったです。指輪ホテルの公演のとき、
黒田さんの事務所を控室にさせてもらって、
登場まで黒田さんの椅子でずっと待機してた。

指輪ホテル『断食芸人/EIN HUNGER-KUNSTLER』劇作・演出・出演:羊屋白玉 出演:SKANK(ニブロール)撮影:畑瀬邦彦

黒田: ベランダの窓枠を生かすためガンガン板を打ち込んだり、
外にスピーカーを置いて、ドアを開けたら本当にこのまちに
サーカス団のような喧騒があるかのように音が聞こえるようにしたり、
その場所その場所の環境に合わせ外気までつくり込む
指輪ホテルのスタッフさんたちのパワフルさっていいなと思った。
カフカの断食する芸人の話が題材だったけれど、
何より白玉さんのアンバランスな呼吸感や
不思議な体温を感じるパフォーマンスが強烈にすごかった記憶がある。
特に食べるところはもちろんだけど、電話で会話するシーンとかね。
その感覚って白玉さんと客席の距離が近くても遠くても
間違いなく感じるんだろうって思いましたよ。
それって何だろうね、独特な演出の技なんでしょうね。
逆に2000人キャパぐらいのホールクラスだと、
どんな演出をするんだろうって楽しみな妄想もしたね。

羊屋: 客席と舞台の間、劇場と外の間には、
踏み込み合えない線が引かれているものですけど、
私、境界を曖昧にするのが好きなんですよ。はみ出していくというか。

黒田: そうなんだね。ついつい会場の物販で白玉さんのことも特集されている
カフカについての本を買ってしまったんですよ。
それぐらい演劇というジャンルそのものすべてにおいて突き動かされた。
今回の指輪ホテルも、札幌の電車の中でやる企画、
お客も演者も膝がぶつかるくらいの劇場、
どんな不思議な体温を感じられるか楽しみだよ。

羊屋: どんな人がOYOYOでやったっていうアーカイブはないんですか。

黒田: それがないのさ。とっておくべきだってみんなに言われたけど、
儚いもの、なまものだって思ってるからかな。

羊屋: 全部捨てちゃったんだ……。どんなことがあったのか知りたかったんだけど。

黒田: あっちの窓は割られるわ、壁は蹴破られるわ、いろいろあったね。
ちょっとやばいこともあったけど、でも出入り禁止にはしなかった。
もう1回チャンスをあげたら次はハッピーなイベントやってくれたよ。

羊屋: 私ちょっと呼びかけようかな。OYOYOでやった人たちのフライヤー募集!

公共のなかでやると「あれなに?」ってきっかけになる

羊屋: OYOYOは変な大人が集まる場所でいいって黒田さん言ってましたね。
でも、ここまで来られない人たちのことも気になるんです。
美術館にやってきたご夫婦が、奥さんはどんどん中に入るのに
旦那さんは「俺はわかんないから」って入ってこないって話を聞いて、
おじさんたちって知らないことが恥ずかしいのかな。

黒田: いや、ホントは知りたいんじゃないかな。納得したいんだよ。
子どもたちだって知りたい、ただきっかけがないだけで。

羊屋: 市電プロジェクトは、興味ない人や余裕のない人、
そういう人にこそ来てもらいたいという気持ちがあるんです。
それを考えると、電車って普通に走ってますから目に入る。
劇場だったら足を運んでいくつも扉を開けないと見られないけど、
公共のなかでみんなの目に触れるところで作品をやるのって、
もしかしたら「あれなに?」っていうきっかけになるんじゃないかな。

黒田: まちにはいろんな人がいるから、こっちから開いてあげるのはいいと思うね。
芸術祭だからこそだね。

9月23日、24日には「SIAF2017 市電プロジェクト×指輪ホテル『Rest In Peace, Sapporo〜ひかりの街をはしる星屑〜』」上演(チケットは全日程売り切れ)。

羊屋: 建物や場所が終わっていくことに対して
人と同じような弔い感があるんですが、
黒田さんてOYOYOが終わるときがどんなふうかなって想像しますか。

黒田: そのままじゃない? 特別なことはなにも。
またスペースをつくるかもしれないけど、まずその意味から考えないと。
でもなんかやりたいね。この8、9年OYOYOをやって、
いろんなものを見ていろんな会話を聞いて、
まだまだすごい可能性はあると思う。
なくなるのは寂しいっちゃ寂しいけど、
ポジティブに考えたら、いまで良かったと思うときがくる気がするけどね。

楽団ざやえんどうライブ@SIAFオフィシャルバー「出会い」at OYOYO。今後もライブやイベント、アーティストの1日店長などもあるので、こちらでチェック。(撮影:樋口勇輝)

profile

Shirotama Hitsujiya 
羊屋白玉

1967年北海道生まれ。〈指輪ホテル〉芸術監督。劇作家、演出家、俳優。瀬戸内国際芸術祭2013 は海で、中房総国際芸術祭2014では鉄道で公演した『あんなに愛しあったのに』など。

profile

Yasutomo Kuroda 
黒田仁智

1963年北海道名寄市生まれ。音楽プロデューサー。レコード会社勤務を経て、札幌でライブ・コンサートのディレクター、2008年より〈OYOYO まち×アートセンターさっぽろ〉代表。

information

map

OYOYO 
まち×アートセンターさっぽろ

住所:札幌市中央区南1条西6丁目 第2三谷ビル6階

SIAFインフォメーションセンター

会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)

開館時間:18:30〜22:30

休館日:月曜(9月18日は開館)

SIAFオフィシャルバー「出会い」at OYOYO

会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)

営業時間:18:30〜22:30

定休日:月曜(9月18日は営業)

堅苦しくないSIAFインフォメーション機能を備えたラウンジバーが会期中オープン。お客さんもアーティストもスタッフもまちの人も、みんなに開かれた解放区。時々ライブやイベントも。パスポート提示でイベント時の割引あり。SIAF巡りの最後はここ!

http://www.oyoyo16.com/

information

札幌国際芸術祭2017

会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)

主な会場:モエレ沼公園、札幌芸術の森、札幌市街地ほか

http://siaf.jp/

information

完全コンプリートガイド 札幌へアートの旅 
札幌国際芸術祭2017公式ガイドブック

マガジンハウスより発売中

http://magazineworld.jp/books/paper/5214/

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