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芸術祭を振り返って、次の旅へ!
あいちトリエンナーレ通信 vol.9

ローカルアートレポート
vol.074|Page 1

posted:2016.11.23  from:愛知県名古屋市ほか  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

writer profile

Yasuko Ichikawa

市川靖子

いちかわ・やすこ●あいちトリエンナーレ2016広報担当。東京文化財研究所などを経てレントゲンヴェルケ勤務後、ART@AGNESアートフェアの事務局代表を担当。その後、あいちトリエンナーレ、アートフェア東京、ヨコハマトリエンナーレなどのプロジェクトで広報事務局を担当。現在は横浜美術館広報部に所属。

撮影:菊山義浩

3年に1度開催され、先日閉幕した国際芸術祭〈あいちトリエンナーレ2016〉。
3度目となる今回は、名古屋市、岡崎市、豊橋市で開催されました。
参加アーティストや広報チームが、その作品や地域の魅力を紹介していくリレー連載です。

芸術祭は、誰のため?

〈あいちトリエンナーレ2016〉短期連載の最終回は、
事務局広報の市川靖子が担当します。

「さあ、出発です!」という港千尋芸術監督のかけ声で始まった
あいちトリエンナーレ2016は、10月23日に74日間の
すべてのプログラムを終了しました。
旅と人間をテーマに、38の国と地域から119組のアーティストが参加し、
最終的に60万人を超える方にご来場いただきました。

これまであまり紹介されてこなかった国や地域、
例えばアラスカやモロッコ、エジプト、キルギス共和国などのアーティストも参加し、
5大陸すべてからアーティストを招聘することができ、
国際色豊かな芸術祭であったと思います。
それらのアーティストたちはわたしたちの旅路の案内人となって、
さまざまな世界に先導してくれました。
実際に旅行をしなくても、愛知にいながら世界中を旅できる、そんな芸術祭でした。

あいちトリエンナーレは美術展だけではなく
パフォーミングアーツのプログラムも充実しています。
パフォーマンス部門では11組のアーティストが愛知に集い、
特にダニ・リマは、スタッフ総勢7名で、日本の反対側ブラジルからの来日。
山田うんは奥三河地方に伝わる〈花祭〉のオマージュとして、
あいちトリエンナーレのためだけに制作された演目を発表しました。

ダニ・リマ Dani LIMA『Little collection of everything』2013(photo:Renato Mangolin Courtesy of the artist)

山田うん『いきのね』(c)羽鳥直志

そしてほとんどの公演が世界初演。これほど充実し、
贅沢なパフォーマンスプログラムは、あいちだからこそ、と言えるでしょう。

デザイントラベルで知られる〈D&DEPARTMENT〉は、
47都道府県を取り上げる書籍シリーズで愛知本を制作。
愛知でリサーチを重ね、トリエンナーレの参加作家として名を連ねました。
そのリサーチの結果は展示作品として発表され、
愛知本は全国の書店にいまも並んでいます。

いまも書店に並ぶD&Departmentの愛知本。愛知の情報がたっぷりです。

愛知ならではの食材が作品になることも。
関口涼子は岡崎独自の八丁味噌をテーマにメニューを考案しました。

関口涼子は八丁味噌を使ったレシピをインスタグラムにアップしてメニューを考案。

いわゆる彫刻や絵画を専攻していたアーティストだけではなく、
文化人類学や、港芸術監督の専門分野でもある映像人類学に
重きを置いた作品が注目されたのも今回の特徴でした。

宇宙に送ったはずのメッセージ。なかなか返事がこないことをつぶやくオウムがなんともシュールなアローラ&カルサディーラの作品。『The Great Silence』2014 Courtesy of the artist

少し専門的な話になってしまいますが、今年は日本各地で
芸術祭やフェスティバルが開催されている「当たり年」と言われているのですが、
それらは誰のための芸術祭なのかという議論も同時に出てきています。
その議論のひとつの回答になるかもしれない事例をふたつ紹介させてください。

2010年、第1回目のあいちトリエンナーレで
繊維問屋街(長者町)が会場の一部になりました。
このエリアの担当だったあるアシスタントキュレーターは、もともと横浜在住でしたが、
これを機に名古屋に移り住み、名古屋から地下鉄で20分ほどの港エリアで、
まちづくりをベースにしたアートプログラムを進めていくために、昨年ビルを改装して
〈Minatomachi POTLUCK BUILDING〉という拠点をつくりました。
これまであいちトリエンナーレに関わった名古屋在住のアーティストや
コーディネーターがここに集っています。

6年前、長者町を自転車で走り回っているアシスタントキュレーターに、
まちの人たちが「ようっ!」と声をかける後ろ姿を何度も目撃しましたが、
今年は港エリアで同じ光景を目にすることができました。

Minatomachi POTLUCK BUILDINGの外観。近くにはメニューのない(!)映画に出てきそうなカフェも。ぜひ足を運んでみてほしい。(Photo:Yasuko Okamura)

また、愛知には芸術大学が多く、最近は制作を目指す学生だけでなく
アートプロデュースに関わる仕事を希望する学生が増えていると聞いています。
1回目のトリエンナーレが開催された6年前に、ボランティアで関わっていたり、
来場者として訪れた中高生たちが、自分の進路を考えるときに
プロデュースを専攻できる芸術系の進学先を選んでいるのかもしれません。

いずれも、愛知での芸術祭が少なからず
まちに影響をもたらしたと言えるのではないでしょうか。

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