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連載

日本の伝統技術を伝える
「アーツ&クラフツ商会」
番組撮影現場へ!

セキスイハイム × colocal
ニッポンの手のわざ
vol.001

posted:2015.5.22  from:全国  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  セキスイハイムが掲げる「時を経ても、続く価値を。」をテーマに、
小山薫堂さん企画・監修のTV番組『セキスイハイム presents アーツ&クラフツ商会』(BS朝日)が生まれました。
日本の伝統工芸を紹介しながら、現代の暮らしを豊かにするニュー・クラフツを提案するこの番組とともに、
日本の各地域の産業や文化を育んできた伝統工芸の知恵や技術、情熱をレポートします。

セキスイハイム
「時を経ても、
続く価値を。」とは?

住み始めてから、どれだけ永く、住まいの価値を維持できるか。十数年後、年を経たあとに、資産としての価値が高くあるのか。
セキスイハイムが、1970年の日本初のユニット住宅の発売以来、もっとも大切に考え続けている家づくりの想い、そして基準です。地球環境にやさしく、60年以上安心して快適に住み続けることのできる住まいへ。

writer profile

Satoko Nakano
仲野聡子

なかの・さとこ●ライター。生まれも育ちも日本一人口の少ない鳥取県。帰省するたびに色が変わっている地元で、まち歩きをしながら新しい発見をするのが最近のブーム。反面、古いモノや場所も消えないでいてほしいと切に願う。

credit

photo:山崎智世

日本の伝統美を伝えるべく、スタッフの力が結集!

BS朝日で放送中の『アーツ&クラフツ商会』は、
毎回日本に古くから伝わる伝統工芸品をご紹介する番組です。
この名前の由来となっているのは、19世紀イギリスの「アーツ&クラフツ運動」。
当時のデザイナー、ウィリアム・モリスが
「古き良き時代の熟練職人による質の高い工芸品のよさを見直し、
現在のライフスタイルに取り入れよう」と提唱し、
手仕事を大切にした商品が続々と生まれた運動のことです。
この番組は、そんなモリスの思想や、
世界に誇るメイド・イン・ジャパンの情熱を伝えています。

企画・監修は、小山薫堂氏です。
もともと、番組スポンサーであるセキスイハイムが、
企業の姿勢として掲げたテーマが「時を経ても、続く価値を。」。
この言葉をベースに伝統工芸を掘り下げていくこの番組が生まれました。

全国の伝統工芸品の中から、ジャンルや地域が多岐にわたるようにセレクト。
「制作チームは毎回工房にお邪魔しているのですが、共通して言えるのは、
どの職人さんもプライドを持って伝統工芸品をつくっていること。
そして、その活力を一番感じられるのが工房であるということです。
通常であれば入らせていただけないようなところまで、
本当に密着して、とても時間をかけて撮影をしています」と話すのは、
小山さんの事務所N35のプロデューサーの岩佐 恵さんです。

番組を統括するBS朝日の魏 治康プロデューサーは
「難しい専門用語もたくさんありますが、
作家と一緒に知恵を出し合って、いかにわかりやすくそれらを説明しながら
伝統工芸の魅力を伝えられるか工夫しています」と話してくれました。

さらにこの番組で注目すべきは、
伝統的な手仕事という技が現代に生きるものを生みだす
ニュー・クラフツという視点です。
BS朝日の宮島花名さんも「伝統工芸を取り上げた番組は多々ありますが、
その技を使って新しいものをつくる企画はこの番組ならでは。
それを、丁寧な編集でかたちにできるよう努力しています」と言います。
受注生産の世界なので、職人さんは常に予約でいっぱい。
その合間を縫って制作していただく大変さは想像するに余りありますが、
毎回番組サイドが提案したアイデア以上のものが返ってくるのだそうです。

左からN35の岩佐さん、BS朝日の魏さん、宮島さん。

番組ではこれまで、鳴子こけしや有田焼、鎚起銅器(ついきどうき)など、
古くから受け継がれてきた日本の伝統工芸品やその歴史、
そして職人技にフィーチャーしてきました。
現代の生活にマッチする“ニュー・クラフツ”を、毎回それぞれの職人が技を駆使して制作。
手仕事の繊細さや温かみが吹き込まれたひとつひとつのプロダクトに、
思わずため息がこぼれます。

宮城県の鳴子こけしの職人さんがつくったのは、中の空洞に手紙を入れて、想いを届ける「交換こけし」。(画像提供:BS朝日)

約400年の伝統を誇る佐賀県の有田焼。制作されたニュー・クラフツは、上下ふたつに分解できる、有田焼クリスマスツリー! 先端はグラス、スソの部分はシャンパンクーラーになる優れものです。(画像提供:BS朝日)

新潟県燕市の鎚起銅器の技術を駆使してつくられたのはランプシェード。職人歴35年の椛沢伸治さんが外側と内側に異なる美しい模様を施しています。(画像提供:BS朝日)

番組の制作現場に潜入しました。

毎回、番組はここからスタート。ダイナミックに書かれた「手考足思(しゅこうそくい)」という言葉は、民芸運動でも知られる著名な陶芸家・河井寛次郎の言葉で「手を動かして考え、自分の足で歩きながら思いをめぐらせる」という意味。小山薫堂さんの直筆です。

「もしあなたが○○に興味を持たれたなら、どうぞこちらへ……」
というナレーションから始まるこの番組の舞台は、実は都内某所にあるアンティークショップ。
アーツ&クラフツの息吹を伝えるべく、
店内にはたくさんの古書や骨董品、家具が並んでいます。
撮影は、まず店内の商品を片付けるところからスタート。
その量、段ボール約10箱分!
さらに天井に照明を追加し、棚を整理し、限られたスペースに大きなカメラを入れる……。
準備だけでも半日を費やす大がかり。スタッフさんたちも大変です。
棚には、これまで番組で紹介した作品もいくつか並んでいます。

壁付けの棚には、江戸切子など、これまでに制作した伝統工芸品も。4月に放送した津軽びいどろの瓶は、番組の美術さんが持ってきたものです。

店主のほかに重要な役割を担うのは、声の主でもある「本の精」。
もともとこのお店にあったアンティークの本に、
美術さんがダメージ加工を施してつくったラベルを貼りました。
実は中も、数ページだけ制作しているそうです。

本物かと間違うタイトルラベルのダメージ加工はさすが!

まだまだ、撮影はつづきます。

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コロカルが訪ねたとき、『アーツ&クラフツ商会』の4代目店主として、
番組をナビゲートする森須 護(もりす まもる)役を務める、
俳優の渡辺いっけいさんの撮影中。
「お客様、お目が高い!」の決めゼリフにも力が入ります。

この日撮影していたのは、
室町時代から桃山時代にかけて、茶の湯の発展とともに人気が高まった岡山県の備前焼。
今回、備前焼の技を使ってつくられたのは、
一風変わったかたちのコーヒーメーカーです。
1滴落ちるのに1.2秒を要し、1杯淹れ終わるのになんと1時間半もかかるのだとか。
このかたちの一輪挿しが水漏れしていたことからヒントを得て、
コーヒーメーカーを制作したのだそうです。
時間をかけて淹れたコーヒーのコクは、飲んだ人だけがわかります。
インテリアとしても素敵です。

そして、もうひとつ。
こちらは何かおわかりでしょうか。
そう、マカロンです。ひとつだけ、食べられないものが混じっています。
詳しくは、5月25日(月)夜11:00からの放送にて!

職人さんがつくる風景まで真摯に撮りたい

ほかに、熊本県の伝統工芸、「肥後象嵌(ひごぞうがん)」(5月4日、18日放送)の回の
撮影も行われていました。
徹底的に質感にこだわって撮影するため、
レンズ交換やライティング変更などもこまめに行われます。

何度もさまざまな角度から光を当てながら、肥後象嵌が美しく写るポイントを探るスタッフたち。

『アーツ&クラフツ商会』の核のひとつが、撮影機材です。
プロデューサーの杉山麗美さんは
「普通の撮影よりも、かなりの手間と時間がかかります」と、現場の苦労を話してくれました。
例えば津軽びいどろも、溶解炉から出したガラス種を吹き棹で素早く膨らませてつくりますが、
カメラではその制作スピードになかなかついていけないのだそうです。
「小さな工房に大きなカメラを入れ、
職人さんに何度も同じ作業を行っていただき、撮り直しを重ねることもあります。
さらに美しい映像をつくるために、室内の照明を落としてもらうことも。
そうすると手元が見えにくくなりますが、
それでも職人さんたちは根気よく付き合ってくださり、ありがたく思っています」
なぜそこまでして機材にこだわり、時間をかけて撮影するのでしょうか。
「やっぱり伝統工芸品を美しく撮りたいということと、
職人さんがつくっている風景を真摯に撮っていきたいというのが一番ですね。
ものづくりを長年続けてこられた職人さんへの敬意を、
私たちなりにかたちにしていきたいと思っています」

取り終えた映像を見た職人さんから
「本当にきれいに撮ってくれてありがとう」とお礼を言われた瞬間、
撮影スタッフの苦労も報われるのだと言います。
「もうひとつうれしかったのは、私たちの知らないところで職人さん同士の交流があったこと。
美濃和紙の回ではニュー・クラフツとして和紙のスリッパをつくっていただいたのですが、
和紙職人さんからスリッパ職人さんに
『素敵なスリッパをつくってくださってありがとうございます』と手紙が届いたと聞いています。
ニュー・クラフツづくりは本当に大変ですが、
職人さんが楽しんでくださっていると私たちもうれしいです」

素敵な裏話とともに、撮影スタッフの“職人技”にも注目です。

古来から和紙の一大産地である、岐阜県美濃市の「美濃和紙」を使ってつくられたのは美濃和紙のスリッパ。(画像提供:BS朝日)

制作スタッフのみなさん。夕方まで都内で撮影を行い、一部スタッフの方は地方の撮影現場へと飛び立って行かれました。本当におつかれさまです!

そして、あの方にもお話を伺いました!

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渡辺いっけいさんにインタビュー

『アーツ&クラフツ商会』という架空の小さなお店は、
『アーツ&クラフツ運動』に感銘を受けた人物が創業したという設定。
その4代目店主である森須 護(もりす まもる)役を務めるのは、俳優の渡辺いっけいさんです。
個性的な髪型に、オーダーメイドのクラシックなスーツ。
おしゃべりなキャラクターも際立っています。
高校時代、美術部に籍を置いていた渡辺さん。
今も美術館に足しげく通っている彼にとって、アートや手仕事は興味のあるジャンルです。
この役をいただいた時も「非常にうれしかった」と話します。
「番組で取り上げる伝統工芸品を見ると、
予想以上に手間ひまがかかっていると感じることが多くて。
きちんとそれらを視聴者の方に伝えなければ、と身が引き締まりますね」

また職人さんたちを見ていて、素晴らしい技を持っているにも関わらず
「私はまだまだ」とおっしゃる方がほとんどであることにも驚きを感じるようです。
「ニュー・クラフツづくりも、苦労しつつ『刺激になっていいですね』と、
楽しんでつくっていらっしゃる職人さんが多いように見受けられます。
昔、歌舞伎役者さんで
『芝居は、今生きている人たちを楽しませるものであるべきだ』
とおっしゃっていた方がいましたが、正にその通り。
古くから受け継がれるスピリッツも大事にしながら、
現代でも愛されるものを目指すという意味で、
我々の世界とも相通じるものがあると感じました。
僕も、そういう役者を目指したいと思いますね」
番組が、自身のお仕事について振り返るきっかけにもなっているようです。

さらに渡辺さんは、職人さんの後継者が減っていることにも触れてくれました。
「こんなに素晴らしい技の数々は、ぜひ後世に残してほしい。
若い世代がこの番組を見て『職人を目指したい』と思ってくれたら、
こんなにうれしいことはないですね」
ナビゲーターのさまざまな思いも載せて、番組は続きます。

次回は、撮影ロケにお邪魔します。

information

「セキスイハイム presents アーツ&クラフツ商會」 

放送局:BS朝日
放送時間:毎週月曜日夜11:00〜11:30
出演:渡辺いっけい
企画・監修:小山薫堂(放送作家、脚本家)
提供:セキスイハイム
http://artsandcraftsco.com/

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