colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

odekake

〈TAMAGUSUKU
COFFEE ROASTERS〉
沖縄カフェ文化に新たな歴史を刻む
路地裏カフェ

おでかけコロカル|那覇編

posted:2016.4.23   from:沖縄県那覇市  genre:旅行

〈 おでかけコロカルとは… 〉  一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。

editors

沖縄CLIP

沖縄クリップは、沖縄の隠れた魅力や新しい情報を、沖縄在住のフォトライターが中心となって美しい写真とともに世界に発信し、沖縄の観光産業に貢献するという目的のプロジェクトです。沖縄が大好きな皆さまとさまざまなかたちでコラボレーションし、ともにつくりあげる新しいかたちの観光情報メディアを目指しています。
編集長 セソコマサユキ
http://okinawaclip.com/

writer profile

Nobuya Fukuda

福田展也

2001年に沖縄に移住。趣味はサーフィンと琉球空手。雑貨のバイヤー、地産地消商品やエコプロダクツの商品企画・商品開発の仕事を東京周辺で経験したのち、沖縄で手仕事にチャレンジ。紆余曲折を経てマーケティングやブランディング、事業企画立案などの仕事の傍ら、編集やライティングの仕事をしている。
http://okinawaclip.com/ja/detail/812

コーヒーにこんな世界があったなんて!

2015年12月10日、〈TAMAGUSUKU COFFEE ROASTERS〉がオープンした日、
個性的なお店がひしめく“カフェ王国”沖縄に、新しい歴史が刻まれました。
観光スポットとしてにぎわう公設市場から、歩いておよそ2分。
ひっそりした“下町”に誕生したこの店は、コーヒーフリークのみならず、
「コーヒーよりも紅茶でしょ」という人たちの間でも話題になっています。

店主のヤフネアキヒロさんが淹れてくれた
カメルーン産のスペシャルティコーヒーからは、
ナッツのような香りとバターのようなふくよかでなめらかな舌触りとともに、
コーヒーが本来持っている心地よい甘みが感じられました。

生産地の土壌や気候、そして生産者のキャラクターが反映された
ハイクオリティなコーヒーをスペシャルティコーヒーと呼ぶけれど、
要するにそれは、飲んでおいしいコーヒーのこと。
ただし、おいしいかどうかは人それぞれの主観に関わるもの。
だからこそ、あるコーヒーがスペシャルティコーヒーと見なされるには、
一定以上の判断基準を持った人たちが
「これはおいしい」と太鼓判を押すことが必要になるのです。

TAMAGUSUKU COFFEE ROASTERSで飲むことができるのは、
8種類ほどのコーヒー。
たとえば、ナッツのような香りがする〈カメルーン・カプラミ・ロングベリー〉や、
浅煎りにすると柑橘や林檎のようなフルーティーさを楽しめる
〈グアテマラSHBアンティグア・ラ・アゾテア〉などなど。

沖縄に来て、「こういう暮らしもあったんだ!」と
ため息をつく人は少なくないけれど、この店に来て、
「コーヒーにこんな世界があったんだ」と新しい趣味に出会えたときのような
ときめく気分になる人も少なくないのではないでしょうか。
それはちょうど、ワインやシングルモルトウイスキーに見出すことのできる
大人の愉悦とも重なります。

かといって、(ここが肝心なのだけれど)この店は
決してマニアやスノッブのための店ではありません。
「人とのつながりがあってこそ、この僕でも開店できました」と語るヤフネさんが、
友人の藤田俊次さん(ご近所にある〈ガーブドミンゴ〉のオーナー)、
亀谷修身さん(自宅のご近所にある〈虹亀商店〉のオーナー)など、
たくさんの仲間たちと一緒につくりあげた空間は、シュッとしたおしゃれさと
人のほんわかとした温もりが同居した、居心地のいい仕上がりになっています。

次のページ
「コーヒー屋は豆腐屋と同じ」?

Page 2

この場所が醸しだす空気感は、明らかに東京のそれとは違う、沖縄的なもの。
「コーヒー屋って豆腐屋と同じで、まちに馴染んでこそのものだと思うんですよ」
と語るヤフネさんが開店に先立って思い描いたのは、
流行に敏感な人だけでなく、近所に住む沖縄のおばあにも、
市場に勤めるにーにーにも利用してもらえる“地域のお店”。
そういった意味では、この店のオープンは
沖縄のカフェ文化に新たな歴史を刻んだと言えそうです。

「いろんな年齢層、いろんな所得水準の人が住んでいるこのエリアに出店するにあたり
最後まで悩んだのは、焙煎の深浅の位置決めと価格設定だった」
という言葉どおり、ヤフネさんの試行錯誤は最後まで続きました。
そうしてたどり着いた価格と味からは「来てほしい人たち」の
立場になって判断されたのだろうということが想像できます。

選りすぐりの農園の豆を手間ひまかけた少量焙煎で
ハンドメイドしていることを考えたら、
1杯400円(アイスは450円)という価格は破格。
肝心の味のほうも、コーヒー豆の個性を十分楽しめる、
誰もが飲みやすいと思えるようなものに仕上がっています。

おいしいコーヒーを手頃な価格で楽しめるTAMAGUSUKU COFFEE ROASTERSは
ストライクゾーンが広く、敷居が低いコーヒー専門店。
人と人の間に橋をかけるコーヒーの魅力を、思う存分に楽しめるお店です。

店内は、珈琲時間をひとりでゆったり楽しみたい人にも、
コーヒーの魅力をいろいろ伝えたいヤフネさんと
おいしいコーヒーについて語り合いたいという人にも、
あるいはその両方を望む人にもフレンドリーなレイアウト。

壁面やカウンターの上に置かれたヤフネさんのコレクトアイテムや
素材も形もひとつひとつ違う不揃いの椅子。
中米を思わせる独特の色調のピンクと、コーヒーの葉っぱを思わせる緑の壁。
観光ガイドに出てきそうなステレオタイプな沖縄はひとつも見つからないけれど、
そこに漂う空気そのものものが、圧倒的な存在感でもって沖縄的です。

公設市場や壺屋あたりは、散歩にもぴったりな「まちまーい」(まち歩き)のコース。
ひと息つきたくなったときに、訪ねてみてはいかがでしょうか。

information

map

TAMAGUSUKU COFFEE ROASTERS 

住所:沖縄県那覇市松尾2-19-39 グリーンハイツ那覇202

TEL:098-988-4566

営業時間:8:30~18:00

定休日:火曜日・金曜日

http://www.tamacoroa.com

Feature  特集記事&おすすめ記事

Tags  この記事のタグ