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家族と一年誌『家族』創刊!
鳥取の森に自分たちの力で
家を建てたある一家の1年

コロカルニュース
vol.1460

posted:2016.1.3  from:全国  genre:暮らしと移住

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。

どこに住み、どんな家に暮らし、
何を食べ、何をして生きていくのか。

1冊まるごと、ひとつの家族の1年を紹介する、家族と一年誌『家族』には、
そんな問いにまっさらなところから取り組んできた、とある一家が登場します。

『家族』は、フリーフォークデュオ〈PoPoyans〉としても活動中の
ノンちゃんこと中村暁野さん、
〈HYOTA〉クリエイティブディレクターの中村俵太さん夫妻が
「家族って一体何なのか。いろんな家族に出会ってみたい」。
そんな思いから創刊した雑誌。

写真:奥山由之

「“家族”とは、人と人が築く最小の社会のかたち。
どれもが尊く魅力的で、同じかたちはどこにもない。
そんなひとつひとつの家族を取り上げていけたら」と、編集長の暁野さん。

1年にわたって取材を重ね、ある家族の暮らしぶりや道具、
まわりの環境、ご近所さんなどを紹介しています。
取材には中村家の娘さんも同行します。

そう。この雑誌は、中村家というひとつの家族が
もうひとつの家族に出会い、取材する雑誌なんです。

その記念すべき第1号に登場するのが、
鳥取県西伯群大山に住む、谷本さん一家です。
〈SBALCO design〉として家具や空間のデザイン・制作を行っている谷本大輔さん、
音楽家・OLAibiとして活動する谷本愛さん、
現在中学校2年生の空南(あなん)君は、今から3年ほど前に
東京から大輔さんの故郷である鳥取へ引っ越してきました。

当初は大輔さんが幼少期を過ごした村に住んでいたそうですが、
ふと訪れた不動産屋さんで、大山(だいせん)の森の敷地に出会ったのだそう。

写真:奥山由之

“森といえば聞こえはいいけれど、
土地は何年も放置されたまま木や蔦に覆われ、
どこからどこまでが敷地なのかもわからない状態だった。
電気もガスも水道もない、通るかどうかもわからないとも言われた。
地球の一部を買うなんて我が強いなあと、
それまで土地を買うとは思ってもみなかったという愛さんは、
茂る木々になる実を見てわくわくとしてきて、
なぜか暮らしていくイメージが湧いたという。”

家族と一年誌『家族』 CHAPTER_1 “家族と一年” より

写真:奥山由之

その後一家は現在住んでいる森のなかに移り、ティピという、
北アメリカのインディアンが住居として用いたテントに暮らす生活を開始。そして、

“なるべく自然の赴くまま、森に生きていた植物や生き物たちに
「おじゃまします」という気持ちで暮らしたい”

そんな思いで木々や蔦を切り、自分たちの住む場所をつくっていきました。

この雑誌には、奥山由之さんや吉楽洋平さんらの美しい写真とともに
それからのことが描かれているのですが、
家を建てる話や3人のやりとりが、とにかくおもしろいんです。

次のページ
“自分で考えるのは、やっぱり面白い”(大輔さん)

Page 2

写真:奥山由之

それまで大輔さんは、内装や小屋を手がけたことはあっても、
家を建てたことはなかったのだそう。それでも、友人たちをもてなすために
屋台のようなかたちのキッチンとダイニングをつくり、
そこに少しずつ手を加え、小屋をつなぐように家を建てていったのだとか。

家づくりには愛さんと空南君も参加し、
当時小学校を卒業したばかりだった空南君は、
なんと、自分の部屋を自分でつくってしまったそう。
しかも、手とり足とりつくり方を教わったわけではなく、
土台と屋根は大輔さんがつくるけれど、後はご自由に、という状態!

写真:奥山由之

「(最初は)出来なさそうって思う。だけどやってみたいって思うし、
やってみたら楽しい。大は教えないもんね」(空南君)

「空南の友達が家に遊びに来ることになった時に、
部屋自体は出来てたんだけど、窓をつけようと奮闘している最中で。
(中略)見てるこっちはもどかしくてしょうがなかったんだけど、
工夫をするんだろうね。ちゃんと窓が付いた」(愛さん)

「教えると考えなくなるから。自分で考えるのは、
やっぱり面白いし、身になる」(大輔さん)

家族と一年誌『家族』 CHAPTER_6 “家族と未来”より

この、3人があーでもないこーでもないと語り合う
対談記事がとってもおもしろい!
涙と笑いなしには読めない一遍です。

写真:奥山由之

それから、住み始めて1年後には〈コウボパン 小さじいち〉や
セレクトショップ〈あわ屋〉、〈きっちんキノピオ〉をはじめとする
地元の仲間たちと音楽と食のイベント〈いずれ焚火ライブ〉を開催したそう。
ライブは異様な熱気に包まれ、大盛況だったといいます。

また、地域の人たちをはじめ、各地から
空間設計やデザインの依頼が寄せられるようになり、
デザイン事務所〈HUT SBALCO design〉もオープンさせました。
でも、『家族』に描かれているのは、移住の成功物語という感じではありません。

そこにあるのは “家族とは? 私たちはどこへ向かうのか?” という問いかけ。
それから、どんな家に暮らし、何をして生きるかということに
丸裸で向き合ってきた、家族の1年。
とにかくシンプルに、そうした家族のいとなみが描かれています。

この本を読んでいると、なんだか寒い日でも森に出かけたくなってくる。
読んでいる方も少したくましくなり、身も心も暖まるような1冊です。

また、この雑誌を手がけた中村さん一家は、
その土地で出会ったお店が集うマーケット〈家族とお祭り〉も開催してきました。

マーケットの面々は〈SBALCO design〉や、
鳥取の〈コウボパン 小さじいち〉〈あわ屋〉〈きっちんキノピオ〉、
空南くんがコーヒーを淹れる〈ANAN coffee〉などなど。

東京で開催し、大盛況だった〈家族とお祭り〉はツアーとなって、
京都、愛知、大山のHUT SBALCO designでも開催され、
各地域と家族をつなぐイベントとして続いています。
また、現在中村家では第2号も準備中なのだそう。
家族と一年誌『家族』とHUT SBALCO designから何が始まるのか、
これからの展開も楽しみです。

小学校3年生の頃から愛さんのためにコーヒーを淹れていたという空南君。2011年に東京・原宿にあるギャラリー〈ROCKET〉に〈ANAN coffee〉として初出店。その後〈Little Nap COFFEE STAND〉の濵田大介さんと出会い、自分でもおいしいと感じるコーヒーを淹れられるようになったそうです。

家族と一年誌『家族』

編集長 中村暁野

クリエイティブ・ディレクター 中村俵太

編集 梶山ひろみ

フォトグラファー 奥山由之、吉楽洋平 ほか

発行所 株式会社HYOTA

価格 1500円(税抜)

2015年5月15日発行

代官山 蔦屋書店 Yahoo店

家族と一年誌『家族』

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