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津軽地方だけで400箇所!
独自の進化を遂げた、
無骨で個性的な庭園流派
「大石武学流」

コロカルニュース

posted:2015.11.23   from:青森県平川市  genre:アート・デザイン・建築

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Akiko Saito

齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。

青森県の津軽地方に伝わる、独自の発展を遂げた
庭園流派、「大石武学流」をご存知ですか?
無骨でシンプル、でもすごく人を惹きつけるふしぎな庭園。
造園業が盛んな平川市尾上地区や、
歴史的な街並みが残る黒石市、弘前市において、
江戸時代末期から近代にかけて盛んに作られたのですが、
津軽地方以外にはほとんど見ることができない流派です。
なぜなら、この流派は、庭師の中からたった一人にだけ
伝えられているから。
その結果生まれた独自の発展を遂げた庭園が、いまも
津軽地方のあちこちにあるんです。
その数、なんと400箇所以上!
国の名勝に指定されているお屋敷から、
一般の個人のお宅まで、数多く築庭されています。

「大石武学流」の特徴は、
近隣に産する巨大で粗野な形の岩石を使うここと。
飛びはねなければ渡って歩けないような大きな飛石を配したり、
枯滝や枯池を設けて石橋を架けたり。
低い築山と小高い築山を築き、随所に巨石を組んで燈籠をたてたり、、、。
借景は岩木山が多く、植栽されている樹木は、
雪国・津軽らしく針葉樹。
このダイナミックな造園方法の理由には、
農閑期などに、地元の商家が小作人たちに庭造りをお願いして
日銭を稼がせるために作業を作っていたから、ということがあるのだそう。

平川市猿賀の国指定名勝 「盛美園」

それでは今も残る「大石武学流」の名勝をご紹介。
まずこちらは、平川市にある「盛美園」。
2階が洋風で1階が和風という、
和洋折衷の洋館「盛美館」が、
庭園を眺めるために明治41年に建てられました。
この「盛美館」、映画「借りぐらしのアリエッティ」の舞台の参考にもされたのだとか。

瑞楽園

続いてこちらは「瑞楽園」。
津軽藩政時代の豪農「對馬家」の書院庭園として、
二度にわたる造庭工事の末に完成された庭園。
明治23年春から明治38年秋までの15年の長い歳月をかけ、
当時の武学流造園の庭師では第一人者といわれた高橋亭山が
造庭に着手したのがはじまりで、
これを昭和3年から亭山門人の池田亭月と
外崎亭陽の二人が増改庭し、昭和11年に完成しました。
いわゆる「大石武学流」の作庭として、代表的なスタイルを貫いています。

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失業対策事業の一環として造園された金平成園

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金平成園

そしてこちらは「金平成園」こと「澤成園」。
政治家及び実業家であった加藤宇兵衛さんが、
地元の失業対策事業の一環として造園したところ。
「金平成園」という名前は、加藤さんによる
「万民に金が行きわたり、平和な世の中になるように」
という願いのために付けられたのですが、
加藤さんの営む酒造業の初代屋号「澤屋成之助」から
「澤成園」とも呼ばれ、いまではこちらの名称のほうが
広く使われるように。
状態が良く保存されており、
大石武学流の独特の作風を良好に伝える優秀な庭園です。

ほかにもたくさんある「大石武学流」の庭園。
津軽地方に行ったらぜひいろいろ見比べてみてはいかがでしょうか。

盛美園

住所:青森県平川市猿賀石林1

TEL.0172-57-2020

瑞楽園

住所:青森県弘前市大字宮舘字宮舘沢26番地2

TEL:0172-96-2744

■金平成園 ※一般には非公開

住所:青森県黒石市

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