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驚異!101歳の
アマチュア画家、江上茂雄さんが
描くクレパスの世界。
福岡県立美術館で個展開催

コロカルニュース

posted:2013.10.22   from:福岡県福岡市中央区  genre:アート・デザイン・建築

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writer profile

Akiko Saito

齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。

ただいま、福岡県の天神にある「福岡県立美術館」にて、
展覧会「郷土の美術をみる・しる・まなぶ 特別編
江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光」が開催中。
福岡出身で現在は熊本在住の画家、江上茂雄さんの絵画が展示されています。
この江上さん、なんと現在の年齢が101歳。そして、美術の教育も受けておらず、
プロとして活動したこともない、完全なアマチュア画家なんです。

こちらが江上さん。
江上さんに関してはろいろ驚くことがあります。
まず、15歳で三井三池鉱業所建築課に入社。
絵を描くことが好きで、会社員をしながら、休日になると
クレパスやクレヨンを手に取っては
大牟田市の風景をスケッチしていました。
昭和47(1972)年に定年退職後は、熊本県荒尾市にお引越し。
毎日自宅から1~2時間歩いた場所でスケッチし、
水彩画を1枚仕上げて帰ってくるという生活になりました。
そうして描き続けた日々の中、90年で描きあげた絵画の数はなんと2万枚!
その作品たちが、展示されているんです。

「習作」1927年前後、水彩

独学で絵を描いてきた江上さん。
江上さんの作品はクレパス・クレヨンを塗り重ねた
独特のマチエールが特徴ですが、
それは油絵の具が高くて買えなかったことから苦肉の策で
生み出した作風でした。

「もう眼も、手足もよく動かなくなったけど、
それでも毎日、絵をやってないと寂しい、
情けない気持ちになって、落ち込むんです。
絵を描いておれば飽きることがないし。
それで毎日、これが最後の作品になるかもしれないと
思いながら、つくってるんです」(江上さん)

『私の筑後路』より、1973年以降、木版画

そしていま、江上さんは木版画をつくっています。

この展覧会は、九州のローカルな美術を楽しく深く紹介するシリーズ展
「郷土の美術をみる・しる・まなぶ」の5回目にして特別編。
普段自発的に美術品に触れることが少ない子どもや親子にも
美術を楽しんでもらうための試みです。
福岡県立美術館の学芸課で、本展覧会を担当されている竹口浩司
さんはこう語ります。

「このシリーズで大切にしたいのは、人がいかに土地とつながって生きて在るのか、
美術という営みはその生と土地とのつながりから
どうやって生まれるのかという視点です」

昭和34年(47歳)から47年(60歳)ごろまで続けられた、実験的なシリーズ『私の手と心の抄』より、1960年代、クレパス・水彩

会期中はワークショップも多数開催。
美術館には、看視スタッフとして来場者を
おもてなしする「ハンズさん」もいますよ。

郷土の美術をみる・しる・まなぶ 特別編

江上茂雄 ― 風ノ影、絵ノ奥ノ光

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